子役が上手すぎる…胸を締め付けるほどの名演とは? ドラマ『明日はもっと、いい日になる』第2話考察&感想【ネタバレ】

text by 古澤椋子

福原遥が主演を務める月9ドラマ『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ系)が放送中。本作は、児童相談所に出向となった刑事が、こどもたちとその親と向き合い、ともに成長していく姿を描いた完全オリジナルストーリーだ。今回は2話のレビューをお届けする。(文・古澤椋子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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ネグレクトの裏にある愛と罪悪感

『明日はもっと、いい日になる』第2話©フジテレビ
『明日はもっと、いい日になる』第2話©フジテレビ

「親の心、子知らず」「子の心、親知らず」。『明日はもっと、いい日になる』第2話は、対義となる2つのことばが頭に浮かんだ。

 第2話では、2組の親子に焦点が当たる。1組目は、ネグレクトを受ける安西叶夢(千葉惣二朗)との出会いから始まった安西親子。

 叶夢は、万引きしたクリームパンとペットボトルの水を小さな体に引き付けるように強く抱きしめ、蔵田(林遣都)を威嚇する。その目つきの裏には、叶夢の小さな胸にある家族を守らなければという思いがあったのだろう。夏井翼(福原遥)にお祭りに行くことをねだったのも、隙をついて家に戻るためだった。

 蔵田と翼が誤解して叶夢を弟の名前である奏夢(小時田咲空)と呼ぶたびに、自分が助けなければという気持ちが溢れていたのかもしれない。ネグレクトといえど、安西家には2人の母である夢乃(尾碕真花)がいた。クーラーをつけていないこと、水道が出ないことを見ると、どちらも料金が支払えずに止められているのだろう。

 奥の部屋にはぐったりとした奏夢の小さな足が横たわっている。児童福祉司たちが乗り込んだ末に、暴れ始める夢乃。暴れる母を見つめる叶夢の姿と、「ごめんなさい」と繰り返し呟く小さな声に胸が苦しくなる。

 弟を助けたい、母親の言いつけを守りたい、母親に怒られたくない、母親と一緒にいたい。1つひとつのカットから叶夢の小さな身体では受け止めきれないほどの葛藤と苦しみが伝わってくる。

 自分のせいで母親が捕まってしまったという罪悪感に苛まれ、叶夢は「ママを返せ」と翼に怒りと悲しみをぶつける。ネグレクトされていたとしても、親を深く思う子の気持ちにどのように向き合うかも、児童福祉司の大切な仕事なのだろう。

「面前DV」とは?

『明日はもっと、いい日になる』第2話©フジテレビ
『明日はもっと、いい日になる』第2話©フジテレビ

 2組目は、無賃乗車を繰り返す森崎野乃花(山田詩子)との出会いから始まった森崎家。3回も無賃乗車を繰り返しているということで、児童相談所に連絡がきたのだ。翼は必死に野乃花に向き合い、思いを聞き出そうとするがうまくいかない。

 第1話でもそうだったように、大人に対して口を閉ざす子どもの頑なさを見ていると、小さな身体に抱える意思の強さを感じる。翼の尾行作戦により明らかになったのは、野乃花がショッピングモールでピアノを眺めているということと野乃花が言い争いを極端に嫌がり、そういった場面を見ることで精神的に追い詰められているということだった。

 その情報と野乃花の様子から蔵田が導き出したのは、「面前DV」による被害だった。「面前DV」とは、激しい言い争いをしている両親の言動により、精神的に追い詰められてしまったり、子どもが自分を責めてしまったりする心理的虐待のことだ。

 両親からすれば、ただの夫婦喧嘩だが、子どもにとってはそうではない。大好きな両親に仲良くしてほしいという気持ちが大きければ大きいほど、息ができないほど巨大な苦しみになる。

無理にでも引き剥がさなければならない親子関係があることも現実

『明日はもっと、いい日になる』第2話©フジテレビ
『明日はもっと、いい日になる』第2話©フジテレビ

 涙を流し、必死に息をする野乃花を救ったのは、翼の野乃花の声が聞きたいという気持ちだった。一方で、蔵田と翼に救われ、両親の言い争いに苦しんだとしても、野乃花は両親を庇うような言動を見せる。

 叶夢も野乃花も他の大人に助け出されようとも親を庇い、親の言動の原因を自分に求めてしまう。大人からすれば、そんな子どもの気持ちを救い出したくなってしまうが、子どもから親への健気な愛情を受け止め、親子関係を取り持つことも児童福祉司の仕事なのだろう。

 叶夢も野乃花も頑なに口を閉ざす行動の裏には、親への思いがあった。野乃花は、翼の寄り添いにより、自分の気持ちをしっかりと両親に伝えることができた。森崎家の場合は、無賃乗車と微笑みながら動画を見ていた理由が分かったことで「子の心、親知らず」が解消され、振り絞るような「ケンカしないでほしい」という野乃花の願いが叶ったのだ。

 本作は、子どもの葛藤を受け止める大人の姿が存分に描かれている。そして、物語の主軸となるのは、子役が表現する苦しみだ。小さな俳優たちの大人顔負けの演技があるからこそ作品が成り立ち、その演技をより魅力的に撮り切る演出やカメラワークが光る。今後もさまざまな親子が登場するであろうが、真摯に演じる子役たちの名演を受け止めようと第2話を見て改めて気持ちを引き締めた。

 第2話の最後には、叶夢の母・夢乃が翼を名指しにして児童相談所に乗り込んできた。森崎家のように児童福祉司が介入することで、親子関係が良好になる場合だけではないだろう。無理やりにでも引き剥がさなければならない親子関係があることも事実だ。蔵田と翼は、安西家にどのように向き合うことになるのだろうか。

【著者プロフィール:古澤椋子】

ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。

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