「観客のみなさんが幸福感のまま帰ってもらえるように」劇場アニメ『ベルサイユのばら』吉村愛監督が語る、制作への思いとは?

text by あさかしき

池田理代子の不朽の名作漫画を新たに劇場アニメ化した『ベルサイユのばら』が現在公開中だ。今回は、吉村愛監督にインタビューを敢行。吉村監督と『ベルばら』との出会いや、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ役の沢城みゆき、マリー・アントワネット役の平野綾について、演出面のこだわりなど幅広くお話を伺った。(取材・文:あさかしき)

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「オスカルとアントワネットの人生を描く」
長編漫画から劇場アニメへの再構成

©池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会
©池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会

―――本作『ベルサイユのばら』は1972年の原作漫画の連載開始から、50年以上を経ての劇場アニメとなります。企画の経緯を教えていただけますか?

「『ベルサイユのばら』(以下、『ベルばら』と表記)は、テレビシリーズ(1979~1980)からこれまでの間に、何度もいろんな会社で企画が上がっては消えて、という経緯があります。私自身、原作のファンだったので、立ち上がったら参加したいとかねてから思っていました。今回のお話は、本作プロデューサーの磯輪(のぞみ)さんと以前TVアニメ『Dance with Devils』でご一緒して、それが終わって飲みの席で『次は何をやる?』って話になったときに、私が『ベルばら』をやりたいと手を挙げたのがきっかけで、かれこれ9年前のことです」

―――長年、温められてきたものが遂に実現されたのですね。吉村監督が『ベルばら』と出会ったのはいつ頃ですか?

「子どもの頃に、親戚のお姉ちゃんの本棚で見つけたのが最初の出会いです。あと私は大阪出身で、BSで宝塚歌劇団の映像がよく流れていて身近な存在で、宝塚版『ベルばら』を観てがっつりハマって、その後原作を読み返して両方にハマった形です。宝塚では色んな方が演じられていますが、涼風真世さんのオスカルと天海祐希さんのアンドレ(・グランディエ)のカップリングが特に美しくて、DVDを買いました(笑)」

―――原作の長い物語を1本の映画として再構成するにあたり、どんなことを意識されたのでしょうか。

「本当は3部作でやりたいところですよね(笑)。とはいえ、1本でやるには、ほとんどの内容は落とさないと収まりません。脚本の金春(智子)さん、プロデューサー陣とみんなで相談して、オスカルの人生を描くことと、原作前半はアントワネットが主役なので2人の主人公の人生を描くことに注力しました」

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