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カンヌで男優賞受賞の快挙…! 役所広司主演『PERFECT DAYS』の評価は? ヴェンダース最新作の現地レビューを紹介

text by 編集部

日本が誇る名優・役所広司は、日本人としては史上2人目となるカンヌ国際映画祭の男優賞を受賞。出演作はヴィム・ヴェンダース監督が東京のトイレをモチーフにした異色作『PERFECT DAYS』だ。同作は、役所の素晴らしい演技に加え、味わい深いラストシーンが話題を集めている。今回は、現地メディアによる本作のレビューを紹介する。

地味だけど、最後は涙が止まらなくなる

映画『PERFECT DAYS』で、第76回カンヌ国際映画祭主演男優賞受賞した役所広司
第76回カンヌ国際映画祭主演男優賞受賞した役所広司Getty Images

『PERFECT DAYS』の監督を務めたのは、ドイツを代表する巨匠ヴィム・ヴェンダース。撮影監督フランツ・ルスティヒによる美しい映像は、カンヌの目の肥えた客を熱狂させた。今回は英The Guardianを参考に、本作のレビューをご紹介する。

俳優の役所広司が演じる主人公の平山は、トイレ掃除の仕事をする中年男性。仕事場から仕事場へと車で移動を繰り返しながら、古い時代のオーディオカセットで、パティ・スミスやキンクス、そしてルー・リードと往年のロックソングやポップスなどを聴く。

作業着に着替え、ブラシとモップを使用し、淡々と作業をこなす平山。手鏡で便器の下や、小便器の裏をチェックする。昼休みには読書をし、木の写真を撮影。自分の感覚とフィットするもの全てに微笑む。特にスカイツリーには目がないようである。

しかし、この平山という人物は一体何者なのだろうか。彼の小さなアパートは、書籍や音楽カセット、写真の箱で満たされている。彼は明らかに知的で文化的な男だ。

かつては社会的地位を得ていたが、過去の苦痛から逃れるため、トイレ清掃員という仕事を選択したのだろうか。その答えは、彼があるバーのドアを覗き込んだ際に見えてくるようだ。また、彼の姪が泊まりに訪れた際に、姪の母親である平山の姉から、父親の認知症が今だ続いていることを告げられる。姉は平山の仕事に呆れているようだ。

映画『PERFECT DAYS』には都会的な魅力があり、俳優の役所広司は抑制された芝居でこの映画を支える。ヴェンダース監督は、主人公の正体を早々に明らかにせず、全てを綺麗に結び付けようとはしない。東京自体の描写は非常に地味とも言えるが、ラストには涙が止まらない展開を見せる。

カンヌで上映された際には5分以上に渡り拍手が続き、観客のコメントの中には「主演を務めた役所広司さんを抱き締めたい。ラストが素晴らしく、涙があふれる」といったものも。日本での配給は現時点では未定となっている

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