折り合いのつけられないテレビマンの物語

地方テレビ局の報道部にカメラを入れたドキュメンタリー映画『さよならテレビ』(2020)、腐敗しつつあるテレビ局の中である地方都市の少女連続誘拐事件を追うADとアナウンサーを描いたドラマ『エルピス−希望、あるいは災い−』(2022/フジテレビ系)ように、『ミッシング』でもテレビマンの葛藤が描かれている。
中村倫也演じる静岡のテレビ局記者・砂田は、テレビ記者の仕事に折り合いを“つけられていない”人物だ。事件の真相を掴みたいが、事件を番組のネタとして消費していいのだろうか。
「一人の誠実な人間」と「数字に魂を売ったテレビマン」、この2つのどちらにもなりきれてない。テレビに魂を売った後輩はキー局に転職して、新人記者(小野花梨)も早々の思考停止して業界に染まってくれそうなのに、砂田は終始どこか不安定だ。ただ、その軸足がどちらにも定まらないグラグラした感じが、テレビにとって僅かな「光」なのかもしれないと筆者は感じた。