ラストシーンが示す宿命とは? 『ゴッドファーザー』を彷彿とさせる結末を解説。映画『クレイヴン・ザ・ハンター』考察レビュー
ソニー・ピクチャーズが放つマーベル最新作『クレイヴン・ザ・ハンター』が現在公開中だ。原作では、スパイダーマンの宿敵として描かれ、ヴェノムに匹敵する強さを誇るクレイヴン。今回は、彼がいかにしてその力を得て、悪名高いハンターになったのかを描く本作の魅力をたっぷりとお届けする。(文・島晃一)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
※本レビューでは映画のクライマックスについて言及があります。
——————————–
【著者プロフィール:島晃一】
映画・音楽ライター、DJ。福島県出身。『キネマ旬報』、『ミュージック・マガジン』、『NiEW』などに寄稿。『菊地成孔の映画関税撤廃』(blueprint)で映画『ムーンライト』のインタビューを担当。J-WAVE「SONAR MUSIC」の映画音楽特集、ラテン音楽特集に出演。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」や『散歩の達人』では、ペデストリアンデッキ特集といった街歩きの企画にも出演、協力。渋谷TheRoomでクラブイベント「Soul Matters」を主宰している。
“マフィア映画”要素を取り入れた挑戦的なストーリー
ソニー・ピクチャーズによる新たなマーベル映画『クレイヴン・ザ・ハンター』は、「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」(SSU)の6作目にあたる。SSUはスパイダーマンに関連するキャラクターのスピンオフ・シリーズで、原作では、クレイヴン・ザ・ハンターはスパイダーマンの宿敵として描かれていた。
監督には『マージン・コール』(2011)などで高い評価を得るJ・C・チャンダー。主人公のセルゲイ/クレイヴン・ザ・ハンターを演じるのはアーロン・テイラー=ジョンソン、弟のディミトリ役に『グラディエーター II英雄を呼ぶ声』(2024)も記憶に新しいフレッド・ヘッキンジャー、父親のニコライ役には名優ラッセル・クロウ、さらには『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)でアカデミー助演女優賞を受賞したアリアナ・デボーズがヒロインのカリプソを演じた。
実力派揃いの布陣で挑んだ『クレイヴン・ザ・ハンター』だったが、なんと公開前にSSUの終了が報じられ、本作で最後になる可能性が出てきた。その影響があったかもしれないが、初週末の興行収入はソニーのマーベル映画で最低を記録。また、批評集積サイトなどでも酷評が相次いだ。
こうした結果をもって、本作を失敗と断ずるのは容易だ。しかし、本作は、マフィア映画の要素を取り入れ、父との対立を通じてヒーロー誕生の物語を作るなど、これまでのマーベル映画にはあまり見られなかった意欲的な部分も際立っている。