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2つの“見えない恐怖”〜演出の魅力

スティーヴン・キング(中央左)とフランク・ダラボン監督(中央右)と出演者たち(2007年の「ミスト」プレミア試写会より)
スティーヴン・キング(中央左)とフランク・ダラボン監督(中央右)と出演者たち(2007年の「ミスト」プレミア試写会より)【Getty Images】

本作は、スティーヴン・キングの中編小説『霧』を原作としたSFスリラー映画。監督は『グリーンマイル』(1996年)『ショーシャンクの空に』(1994年)のフランク・ダラボンで、主演のデヴィッドを『ブギーナイツ』(1997年)のトーマス・ジェーンが演じる。

本作には、2つの「見えない恐怖」が描かれている。1つは「先が見えない霧の中から襲ってくるクリーチャーたち」、そしてもう1つは、「人間の心の分からなさ」である。

まず前者についてはわざわざ説明するまでもないだろう。街を濃霧が取り囲み前後不覚の中、主人公たちを虫やタコなど、さまざまなクリーチャーが襲ってくる。どこから何が襲ってくるのか分からない状況が、観客の恐怖を存分にかき立てる。

そして後者に関しては、本作のあちこちに裏口に出た怪物の存在を一向に信じようとしないノートンらや、狂信的な魅力で「信者」をみるみる増やすカーモディらが挙げられるだろう。

特にカーモディに心酔する「信者」たちは、間違った正義感から「軍が『アローヘッド計画』に関わっているから」というだけの理由で、うら若き軍人であるジェサップを殺してしまう。主人公のデヴィッドと彼らの心の間には、明らかに分断がある。

この世で一番予測できないのは人間の心である―。そんな事実を改めて意識せざるを得ない秀逸な設定である。

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