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名作ぶち壊し…史上最低のリメイク日本映画(4)。まさかの大コケ…ズレた男による時代遅れで大爆死の時代劇

text by 寺島武志
主演を務めた織田裕二【Getty Images】

今回はリメイクされた最低の日本映画をセレクト。旧作をリスペクトしているのは分かるが、あまりにもお粗末過ぎる…。せっかく製作するなら、もう少し過去作に寄せるなりして欲しかった…。「名前だけ借りたかっただけでは?」と、ついつい小言を言いたくなってしまう作品群を紹介する。(文・寺島武志)

●森田芳光監督の野心が光るも興行的には失敗

『椿三十郎』(2007)


出典:Amazon

製作国:日本
監督:森田芳光
脚本:菊島隆三、小国英雄、黒澤明
キャスト:織田裕二、‎豊川悦司、‎松山ケンイチ

【作品内容】

オリジナル版は、黒澤明監督のもと、三船敏郎、仲代達矢、加山雄三、小林桂樹といった錚々たるキャストが集結。当時の恒例だった、東宝の「正月映画」として1962年に公開された時代劇映画の代表作ともいえる不朽の名作だ。リメイク版は2007年、一切加筆訂正せずに前作の脚本をそのまま使用し、森田芳光監督のメガホンの元、モノクロとカラーの画面の差も含めて、各シーンに現代的なアレンジが施されている。

【注目ポイント】

黒澤監督は晩年「人を斬る音と血の噴出を時代劇で定着させてしまったのは自分だ」と強い罪悪感を抱き、その後、派手な殺陣をみせる豪快なチャンバラシーンを避けるようになったことで、リメイク版の決闘シーンは、細かいカット割とスローモーションを使った新たな演出がされている。

森田芳光監督らしい“ケレン味”の効いた演出が見どころではある。とはいえ、代表作『家族ゲーム』(1983)や『間宮兄弟』(2006)に顕著だが、森田芳光の映画作家としての素質は、あくまで日常的な風景を異化するセンスにある。その点、時代劇というジャンルとの親和性は決して高いとは言えない。

織田裕二を主演に迎え、豊川悦司、松山ケンイチ、佐々木蔵之介 鈴木亮平といった、現在では主役級の俳優が名を連ね、プロデューサーの角川春樹氏は「興行収入60億円」を宣言したものの、最終的な興行収入は約11億円に終わっている。すでに“時代劇離れ”が進んでいた時代背景と、この時から既に角川春樹氏の感覚が時代とずれてきていた印象も受ける。

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