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「生きてる? そら〜」心に染みる名作映画の感動名セリフ(5)。日本映画史に残る名言、その背景にあるのは?

text by ZAKKY
【Getty Images】

感動的な映画には、得てして「名言」と呼ばれるセリフが存在する。逆に言えば「名言」があるからこそ、その映画は「名作」として語り継がれていると言っても過言ではない。今回は、この混沌とした現代に生きる人々に今一度聞いてほしい名言を5つピックアップした。今回は第5回。(文・ZAKKY)

~名言5~
「生きてる? そら結構だ」

『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(1995)


出典:Amazon

上映時間:110分
製作国:日本
監督:山田洋次
脚本:山田洋次
キャスト:渥美清、浅丘ルリ子、夏木マリ、後藤久美子、倍賞千恵子、吉岡秀隆、下絛正巳、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄

【作品紹介】

26年間続いた『男はつらいよ』シリーズの第48作目にして、最終作。ある日、寅次郎の実家である柴又の草団子屋「くるまや」の面々が何気なくテレビを見ていると、この年に起こった阪神・淡路大震災に関するドキュメンタリー番組が放送されていた。そこにはなんとボランティアとして活躍する寅次郎の姿がある。被災地において、持前の明るさで尽力をする姿が。皆、びっくりしながら、寅次郎の安否を気にするのだが…。

【注目ポイント】

第25作『寅次郎ハイビスカスの花』から、4度目の出演となる浅岡ルリ子演じるリリーがマドンナ役として登場する。寅次郎は彼女となんと奄美大島で同棲をしており、いよいよ結婚か? と思わせる描写も見どころだ。とはいえ、ここでは、そのエピソードとは別に、奄美大島から心の故郷である「くるまや」に寅次郎が電話をかけるシーンに注目したい。

寅次郎は、店に電話するが、彼のことを知らない女性店員が出て、「どちらの寅さん?」と怪訝そうな応対をされる。

「さくら(倍賞千恵子)を呼べ、さくらを!」
「まだ、来ていません」
「だったら、うちのもんでいいから誰か呼べよ!」
「誰もいません!」
「死んじまったのか?みんな?」
「生きてます!」
「生きてる?そら結構だ」
「長い間、ご無沙汰しているけども、無事に過ごしているからご安心くださいと、そう言ってくれ!」

『男はつらいよ』シリーズ史上屈指の名言は、このなんともない、ぶっきらぼうな会話の中で生まれた。セリフのトーンは、もちろん寅さんらしさが込められた、あの名調子である。

本作において、寅さんは、阪神大震災のボランティアに向かい、大切な人を亡くして途方に暮れる人々をたくさん見てきたと推測される。そんな彼から自然と発せられた言葉が上記の名言なのである。人間、生きているだけで、いいのだと。脚本の見事さに思わず唸る。

寅さん役の故・渥美清は、撮影当時、癌を患っており、この作品が遺作となった。そのことを踏まえると、この名言の重みはグッと増すことだろう。

(文・ZAKKY)

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