ドラマ『晩餐ブルース』第1話考察&感想レビュー。何気ないワンシーンで心を掴まれた…視聴継続を確信したその理由とは?

text by 苫とり子

井之脇海&金子大地がW主演のドラマ『晩餐ブルース』(テレ東系)が、1月22日(水)深夜より放送開始した。本作は、仕事に忙殺されるサラリーマンと、夢から挫折し人生休憩中のニートが晩ご飯を一緒に食べる”晩活”グルメドラマ。今回は、第1話のレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

——————————

【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

繊細なワンシーンで心を掴まれた『晩餐ブルース』

『晩餐ブルース』第1話 ©「晩餐ブルース」製作委員会
『晩餐ブルース』第1話 ©「晩餐ブルース」製作委員会

 ゴミや洗濯物で散らかって、足の踏み場のない部屋。唯一片付いているベッドに寝転びながら、スマホのメモ帳アプリを開き、タスクを追加する。目の端から流れ落ちる涙。何気ない。けれど、繊細なこのワンシーンだけで、ずっと見続けようと心に誓った。

 1月22日(水)の深夜に始まったドラマ『晩餐ブルース』。主人公の田窪優太(井之脇海)は、テレビ局で働くドラマディレクターだ。監督、演出家とも呼ばれる。舞台がテレビ局、主人公が脚本家のドラマは今までもあったが、ドラマディレクターという職業がドラマで取り上げられるのは案外珍しい。

 本作にも、もちろんドラマディレクターが関わっているので描写がリアル。想像はつくけれど、かなりの激務だ。台本のチェック、プロデューサーや衣装さん、音声さんとの打ち合わせ、映像編集、企画開発、営業にきた芸能マネージャーの対応など、やることは山のようにある。

 しっかり席について、食事を摂る暇なんてない。作業しながら片手で食べられるパンを、“食べる”というよりは、何も食べなきゃ体に悪いから“胃に流し込む”。家には寝に帰るだけ。朝が来て、田窪は出勤途中にベンチ利用が禁止され、行くあてもなく街を彷徨うホームレスの横を通り過ぎる。

 時代を映す鏡とも言えるドラマを作る人間は本来なら、そういった社会の動向に目を向けなければならない。けれど、田窪は一瞥もしなかった。目の前の仕事で精一杯だから。

 自然と涙が溢れてくるなんて、体が悲鳴を上げている証拠。でも、スルーして、次の日には何事もなかったように振る舞う。他人のことも、自分のことも、構っている余裕がないのだ。

 そうやって自分のことを後回しにした結果、どうなるか。わからなくなるのだ、自分が。

 ドラマディレクターは、いわゆる花形の職業。誰もがなろうと思ってなれるものではない。きっと、田窪も必死で努力して夢を叶えたのだろう。作りたいものだって、あったはず。

 だけど、いざ企画も演出も任される立場になったら、自分が何を作りたいのかが分からない田窪。身に覚えがありすぎて、胸が苦しくなった。

1 2 3
error: Content is protected !!