ドラマ『いつか、ヒーロー』第1話考察レビュー。日本は”国ガチャアタリ”? この時代にこのドラマが放送される意義とは? 【ネタバレ】
桐谷健太主演のドラマ『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が放送開始した。本作は、20年間消息不明だった謎の男が、夢を失くした若者達とともに腐った大人を叩きのめす不屈の復讐エンターテインメント。今回は、第1話のレビューをお届け。(文・西田梨紗)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:西田梨紗】
アメリカ文学を研究。文学研究をきっかけに、連ドラや大河ドラマの考察記事を執筆している。社会派ドラマの考察が得意。物心ついた頃から天海祐希さんと黒木瞳さんのファン。
守ってくれる大人がいる世界の中で夢を抱く子どもたち
イマドキの若者言葉をあえて使うのであれば、日本に生まれたことは“国ガチャアタリ”といえよう。この国では80年近く戦争はないし、他国と比べても治安がよく、衛生的だ。また、職業も自分の意思で選択でき、本人の才能や努力次第では政治家にも社長にもなれる。
そうはいっても、日本について生きづらい国だと思っている人もいる。親の経済力、家庭環境、生まれ育った地域によって、人生は決まるも同然と絶望感を抱いている人は若い世代を中心に少なくない。こうした時代に、「人間はなんにでもなれる」と語る誠司(桐谷健太)が主人公を務める『いつか、ヒーロー』が放送されることは、深い意義があるはずだ。
本作は2005年まで時代を遡り、児童養護施設・希望の道を舞台にしたシーンから始まった。この施設で暮らす子どもたちは親と暮らせない事情を抱えており、社会的に厳しい状況にあることを否定できない。しかし、かれらの笑顔から察するに“今”を楽しんでいるようだ。
それだけでなく、かれらは自身の明るい未来を夢想している。それぞれが「留学したい」「サッカー選手になりたい」「金持ちイケメンの嫁になりたい」と夢を抱き、先生や仲間たちと思いを喜々として共有している。
希望の道の子どもたちが笑顔で暮らせているのは誠司の教育の賜物だ。かれらには「夕焼け小焼け」のチャイム音に自分たちには帰る家がないのにと腹を立てて、防災無線に石を投げていた時期もあった。誠司は家がないと口にする子どもたちの家となり、それぞれに愛情を注ぎ、夢を抱けるようになるまで育て上げたのだ。