最も謎めいた日本のファンタジー恋愛映画は?(4)1度目じゃわからない…時間軸逆行の「もう一つの世界」とは?
映画『2001年宇宙の旅』(1968)以降、大作志向が顕著になったSF映画。しかし、中には、心がホッとするようなファンタジックなSF映画も作られ続けている。そこで今回は、日本で作られた「ゆるふわSF映画」をセレクト。甘く切ない男女の恋愛を描いた作品や、ゆったりと流れる古都の悠久の時間を刻み込んだ作品など、5本を紹介する。第4回。(文・シモ)
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「未来人」との儚い恋の行方
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)
【作品内容】
美大生の高寿(福士蒼汰)は、通学電車の中で偶然見かけた愛美(小松菜奈)にひとめぼれする。高寿は勇気を出して彼女に声を掛け、意気投合。
やがて2人は付き合うことになるが、愛美の信じられないような秘密を知ることになり…。
【注目ポイント】
七月(ななつき)隆文の同名ベストセラー小説を実写化した作品。監督は『ソラニン』(2010)や『僕等がいた』(2012)などで知られる青春映画の名手、三木孝浩が務める。
京都市を舞台に若い男女の40日間を描いた本作。しかし、例によってその恋愛は普通の恋愛ではない。物語が進むにつれ、愛美が時間軸が逆行する「もう一つの世界」から来たことが判明するのだ。
つまり高寿にとっての未来は愛美にとっての過去。しかも2人がこちら側の世界で出会えるのは、月の満ち欠けの周期である30日間だけ。30日が過ぎたら愛美は元の世界に帰ってしまうのだ。
2人の時間は二度と交わらずに終わってしまうのだろうかー。この問いの答えは、ラストの展開に隠されている(以下はネタバレとなるためご注意いただきたい)。
愛美は高寿の過去の視点から高寿との未来をメモし、2人が5年に一度出会えるよう、シナリオを作っていく。そして、時間軸の端と端がつながった瞬間、2人は同じ世界で再び出会うことになるのだ。
異なる時間軸に生きる男女の恋愛模様を描いた本作は、未来と過去を2人の視点から繰り返し鑑賞することでより理解が深まる作品となっている。噛み締めるように何度も味わってもらいたい一作だ。
(文・シモ)
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【了】