『人事の人見』第8話考察&感想レビュー。松田元太“人見”のような異分子が必要…劇中に感じた制作側の意図とは?【ネタバレ】
松田元太(Travis Japan)が単独初主演を務める火9ドラマ『人事の人見』(フジテレビ系)が、現在放送中。本作は“人事部”に焦点を当てた、痛快オフィスエンターテイメント。さっそく、第8話のレビューをお届けする。(文・ふくだりょうこ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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「マミートラック」解決に奔走した人物は?
今回の課題は「マミートラック」。
マミートラックとは「女性社員が産休や育休明けに仕事内容の変更などを命じられ、キャリア形成に支障が生じること」。
人見(松田元太)の上司である平田(鈴木保奈美)は「子育て支援策」の実施に取り組んでいた。が、あともう少しのところで小笠原社長(小野武彦)のNGが出て頓挫してしまう。
しかし、すでに取り組みをアピールするために雑誌の取材も依頼済み。取材を務めるライター・篠原(久世星佳)。篠原はかつて日の出鉛筆の社員で、平田の憧れの先輩でもあった。ただ、出産育児を経たことで、まともな仕事をさせてもらえず退社したのだ。まさに「マミートラック」。
平田としては、「日の出鉛筆は変わったのだ」と篠原に知ってほしいという思いもあった。が、直前に社長命令で頓挫したから取材はキャンセル……となれば、また篠原をがっかりさせることになる。
そこで、こっそりと託児サービスをプレオープンさせ、取材を受けることに……。再び人事部の面々はトランシーバーを片手に作戦を決行することとなる。
平田(鈴木保奈美)の草案に唸ったワケ
平田が草案を作った子育て支援策が素人目ながらとても良いな、と思った。社内に託児所があったり、介護や子育てをしている人のためのリモートワーク、また、ママたちの仕事を代わった人へのサポートなど行き届いている。「制作側のこうあったらいいな」という思いが込められているのだろうか。子育てだけではなく、介護まで包括されているのが行き届いている。
こんな良い取り組みをなぜ小笠原社長は却下したのか、というと、自分の知らないところで話が進んでいたから。日の出鉛筆がワンマンだと言われる所以である。
さらに小笠原社長が口にしたのは「不公平感」だった。子育てしている人だけにそういった待遇をするのは不公平じゃないか、と。「不公平とはなんなんだろうか……」と思わずつぶやいてしまった。
子どもが熱を出したから早退する。これが不公平だというのだろうか。仕事をしたいのにできない、不快な視線を向けられる。いやいや、ママだって仕事を投げ出したいわけじゃない。少しでも肩身が狭くならないように、そして不満が出づらくなるように、仕事を代わった人へのサポート制度も含まれているのだろう。
それに、子育てする側からすると「仕事だけができていいな」と思うかもしれない。産んだのは自分の責任だろうと言われるのだろうか。子どもが減りつつある今の世の中で、産むことにもっと手厚いサポートと理解があってもいいのではないか。あと給料が上がれば……と、「子どもを産む」「子どもを育てる」に付随して、今の社会のさまざまな問題が浮き彫りになる。
子育てとラグビーに共通することは?
そして、ママたちを生きづらくさせているのは、明らかに小笠原社長のような考えの人がいるからだろう。そういった人たちにどうやったらママたちの大変さを理解してもらえるか。
そこで人見たちが出した案は子どもも交えて小笠原社長が大好きなラグビーをすること。子どもたちは急に勝手に動く、そのフォローをしなければいけない、フォローのために動いたことによって、チーム編成に穴ができる、さらにそのフォローをしなければ点を取られる。これを子育てに当てはめた。なるほどな、という作戦である。
ただ、これは小笠原社長のような人がさらに頑なになる可能性がある作戦だ。「なら、仕事は男だけでやればいい」と言ってもおかしくない。女は黙って家で育児と家事をしていろ、と。さすがにその展開はなかったけれど、思っていたとしてもおかしくない。どうやってこの考え方を根本的に改善するか。
そう、この物語は最初からどうやって小笠原社長(のような人たち)の考えを変えるか、を論じていた。そのために、人見のような異分子が必要だったのだろう。人見が小笠原社長の考えを変える、という展開は美しいが、果たしてここまで積み重ねてきた小笠原社長の価値観をひっくり返すことができるのか。
それに、小笠原社長がいなくなったとしても、「次の小笠原社長」が現れないとも限らない。
抜本的な意識の改革。これが作品の中においてどのように展開されるのか、終盤にかけて期待したい。
【著者プロフィール:ふくだりょうこ】
大阪生まれ関東育ちのライター。
大学卒業後からライターとして活動、シナリオ制作やエンタメジャンルの記事を中心に執筆。
ドラマと邦画、ハイボールと小説が好き。
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