アニメのプロが脱帽した実写版『リロ＆スティッチ』の計り知れない魅力とは？山寺宏一ら声優陣のガチ感想も紹介。考察レビュー

2025/06/06

text by 諏訪道彦

少女リロと暴れん坊でイタズラ好きなスティッチの物語を完全実写化した映画『リロ＆スティッチ』が公開中だ。今回は、『シティーハンター』、『名探偵コナン』をはじめ、数々の名作を手がけてきた、アニメプロデューサーの諏訪道彦さんによるレビューをお届け。作品の魅力を紐解く解説文と豪華声優陣による独占コメントを紹介する。（文・諏訪道彦）

いつだって“現在進行形”のキャラクター、スティッチという奇跡

　今回の新作実写映画告知を見て「キャラクターが生きているってこういうことなんだ」とかなりビックリ。劇場アニメーション『リロ＆スティッチ』が公開されたのは、2002年。もう23年も経っているのに、スティッチはずっと活躍していたかのような錯覚をしていました。ディズニーランドにキャラクターは居ても、新作は作られていなかった。でも、スティッチはなぜかいつも現在進行形でどこかに居る、ボクにとってはそんな受け止め方をしていたキャラクターでした。

　ご縁をいただき試写会でひと足早く鑑賞させていただきました。スティッチは悪の天才ジャンバ博士が違法な遺伝子操作によって生み出した破壊生物。可愛い顔して凶暴な性格の持ち主です。どんな攻撃にも耐える圧倒的な身体と、スーパーコンピューター並みの知能を持つ、計り知れない”破壊力“を持った手がつけられない野獣…という設定ですが、それが「家族」へと昇華していくキャラクターの進化ストーリー。

　よくあるパターンであり、スティッチと迎える側のリロの様々な事情が描かれるのもお約束です。地球側社会で生活する人間たちを取り巻くいろいろなルールが、リロとナニのふたり姉妹をはじめとした登場キャラクターたちを何かと縛り付けて悩ませ、その枷が豊かなドラマを形作っていく。

　本作は、ボクが「リアルファンタジー」と呼んでいる、愛すべきジャンルにカテゴライズされると思っていて、おそらく観る者みんなの新しい扉を開いてくれています。それにしてもボクにとっても憧れのハワイのカウアイ島を舞台にした今回の実写版は、さまざまなシーンを擬似体験させてくれて、それが観る者を物語に没入させるフックになっていると感じます。

実写版『リロ＆スティッチ』、名優たちが語る“オススメポイント”

　とにかく映像の出来栄えも本当に素晴らしく、スティッチはもう究極のリアル的キャラクターじゃないでしょうか。二次元の存在であることを超えて、本当に生きています。そしてこの映画は日本語吹替版も素晴らしい役者さんたちが携わっています。ちなみにその中でもボクがよく知る人たちに、収録に参加した感想を踏まえた本作の「オススメポイント」を直接聞いちゃいました。

　まずはスティッチ役の山寺宏一さんの感想を紹介します。

山寺「実写化大成功作品だと思います。家族の絆の大切さがよりリアルに感じられ素晴らしい感動作に！スティッチもモフモフキュートさが増しています。宇宙一の暴れん坊ですが、きっと抱きしめたくなるはず」

　続けて、銀河連邦議長役の深見梨加さんの感想を紹介します。

深見「実写版はアニメ版よりスティッチがモフモフしてて可愛いです！アニメ版のイメージを損なわず忠実に再現しつつ、実写のキャラ立ちや心の動きに感動です」

　さらに銀河連邦諜報員プリークリー役の三ツ矢雄二さん。

三ツ矢「ジャンバとプリークリーが地球人になる所。地球人の研究者であるプリークリーが地球人のファッションを、ちょっと勘違いしてる所も探すと面白いかも。後はスティッチの純真無垢なまなざしに泣いて下さい」

　山寺さん深見さん三ツ矢さん、本当にありがとうございました！

アニメーションと実写映画の壁を超える出来栄え

　山寺さんと三ツ矢さんは2002年のアニメーション版からの続投！本国側のキャストもスティッチはじめ続投メンバーもいて、アニメーションと実写映画の壁、みたいなものがまるで感じられない出来栄えになっているのもよくわかります。

「愛を知らないエイリアンと愛を無くしたひとりぼっちの少女。きっと明日は、家族(オハナ)になれる」これは公式のキャッチコピー。でも家族=オハナという言葉選びは絶妙で、出来すぎているくらい。というわけで必見の作品です。

　で、すみません、最後にもうひとことだけボクの抱いている想いを。「スティッチは今も確かにハワイでお花が咲くように生き生きとリロと生活していますよ」

【諏訪道彦プロフィール】

1959年愛知県生まれ。「シティーハンター」「名探偵コナン」「犬夜叉」など企画・プロデュース。劇場版「名探偵コナン」シリーズは23作目「根性の拳」まで企画・プロデュース。2023年10月「株式会社アスハPP」設立。現在は引き続き新作アニメーションの企画プロデュース業を行う。現在大阪芸術大学芸術計画学科教授。

【了】