「狂気的な増量がすごい!」壮絶な役作りに挑んだ日本人俳優(3)。凄まじい役者魂…30キロ増で役になりきる男
自分以外の人間を演じる“俳優”。彼らは時に、我々には想像を絶する役作りをしている。人を感動させるためだけに作られる映画に、体の一部や生活を差し出してまで演じるということは、一体どういうことなのだろうか。そしてその映画は我々に何をもたらしてくれるのか。今回は、俳優が壮絶な役作りをした映画を5本セレクトして紹介する。(文・野原まりこ)
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原作に忠実な姿になるため30キロ増量
映っていない部分でも役になりきるプロ根性を発揮
鈴木亮平『俺物語!!』(2015)
原作:アルコ・河原和音
監督:河合勇人
脚本:野木亜紀子
出演:鈴木亮平、永野芽郁、坂口健太郎
【作品内容】
高校1年生の剛田猛男(鈴木亮平)は、高校生離れした顔面と巨体を持つ硬派な日本男児。しかしその心は優しくて純粋で、外見のせいで女子からの人気はないが、男子からは絶大な信頼を寄せられている。そんな猛男には、イケメンで女子からモテモテの親友・砂川誠(坂口健太郎)がおり、猛男が今まで好きになった女子はみんな砂川を好きになっていた。
ある日、猛男と誠が街中を歩いていると、しつこいナンパに困っていた女子高生・大和凛子(永野芽育)を助ける。大和に一目惚れする猛男だったが、後日、3人で会った時に大和は砂川のことが好きだと思い込んだ猛男は、2人の恋を応援することに。しかし、大和は誠ではなく、実は猛男に思いを寄せていて…。
原作・河原和音、作画・アルコによって『別冊マーガレットsister』で連載された少女漫画を原作にした異色のラブコメディー。原作は、少女漫画としては異色の、巨漢男子を主人公とした作品だ。
「第1回マンガ秋100」にて第1位、2013年版「このマンガがすごい!」オンナ編1位。2013年に講談社漫画賞 少女部門、2016年に第61回小学館漫画賞 少女向け部門など、数々の受賞歴がある人気作品。
【注目ポイント】
原作の猛男は、身長2m、体重120kg。
「原作ファンの期待を裏切りたくない」という思いから、体重を30キロも増やして撮影に臨んだ鈴木亮平。撮影中もこまめに炭水化物を摂取しながら、体型維持に努めていたという。
鈴木亮平は演じる役によって体重をコントロールする話は有名だが、俳優だからといっておいそれとできる所業ではない。本人のストイックな性格と役にかける熱い思いが、常軌を逸した役作りを可能にさせている。
「学園モノのラブストーリーの主役をやってみたかった」と言っている鈴木だが、企画が持ち上がった時はすでに32歳。ヒロインの永野芽郁が16歳で、実に16歳差である。
しかし、コメディタッチで描かれるということもあり、両者の年齢差は作品の魅力を損ねるどころか、むしろ味になっている。鈴木は観客を笑わせながらも、細やかな演技でキャラクターに現実感を付与しており、観る者の共感を自然に引き出すことに成功している。
劇中、猛男がキスの練習をしたいと言いだし、親友である砂川の顔にラップを押し付け、その上からキスをするというシーンでは、キスする寸前でカットが変わるが、現場では、本当にしていたというエピソードがある。
画面に映らない部分でもキャラクターになりきり、役と自分に決して嘘をつかないこと。役者・鈴木亮平の常軌を逸した芝居への情熱が堪能できる一本だ。
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