『相棒』史上最高の神回は…? 亀山薫編の最高級傑作(4)社会派の源流…“杉下右京の毒”が炸裂した回とは?
変人だが腕が立つ刑事の杉下右京と、その相棒が事件を解決していくドラマ『相棒』。シリーズは2000年から2024年現在まで、約400話のテレビシリーズを始め、様々なコンテンツで親しまれている。今回は初代&5代目相棒・亀山薫(寺脇康文)の回の中でも伝説的なエピソードをセレクト。その面白さの真髄に迫る。(文・Naoki)
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警察官の仲間意識は「諸刃の剣」?
“杉下右京の毒”が炸裂する神回
『最後の砦』シーズン7
放送日:2008年12月3日
脚本:櫻井武晴
犯人役:ムロツヨシ
【神回である理由】
この話の選出理由は“杉下右京の苛烈な正義”である。
スクーターですれ違いざまに人を切りつける通り魔事件が発生。所轄の野村警部補は辻を逮捕。しかし辻は犯行を否認し、野村は自白を引き出そうと長時間かつ暴力的な取り調べの末に突き飛ばして死なせてしまう。
野村は目撃していた取調監督官の下柳へ隠蔽を懇願。下柳は隠蔽を拒み真実を報告をするが、内村刑事部長を始めとした上層部は隠蔽を決定し下柳へは「警察の信頼を守る“最後の砦”として口をつぐんで欲しい」と伝える。また辻に関しても病死かつ通り魔だったと結論付ける。
隠蔽に勘づいた大河内監察官、通り魔の真犯人が別にいる可能性を模索する伊丹、全てを明らかにしようとする特命係…三者三様に捜査を進める。
下柳は仲間を裏切る“取調監督官”という仕事の矛盾、不正を見て隠蔽する苦しみに耐えられず自殺する。
大河内は小野田官房長に潰され、伊丹と右京は下柳の行動を目の当たりにして動かない。しかし右京だけは捜査を続けスクーター通り魔の真犯人、そして辻が真犯人と事故を起こし脳出血を起こしていた事実を突き止める。
上層部は真犯人逮捕と真犯人が起こした事故を公表して違法な取調べは無かったと発表。また「取調監督官が警察の信頼を守る“最後の砦”となる事を皆さんにお約束いたします」と宣言。
一方野村は皮肉にも“取調監察官”への異動を命じられる。
仲間の警察官…右京が不正をしたらどうするのかを考えた亀山は「そうしなきゃならなかった、そういう事情があったんだと俺は考えると思います。右京さんは俺の上司で“相棒”ですから」
しかしそんな言葉も右京は「警察官の仲間意識は諸刃の剣」だと跳ね除けてしまう。
本作は先述した「裏切者」と同じ脚本家である櫻井武晴が執筆している。彼はS6で杉下右京の正義は時に暴走するという事を示し、『相棒』を社会派と呼ばせるまでに成長させた。
本作で特筆すべきなのは杉下右京の“毒”だ。
下柳の自殺で亀山は揺れるも、右京だけは下柳が苦しんだ上で隠蔽に加担した事を不正だと断じた。亀山はそんな右京を「強くて正しい」と評した。
この苛烈なまでの正義は組織にとってだけでなく以降の歴代相棒達にも立ち塞がってくる。杉下右京という人物描写において、この話は欠かす事のできない分水嶺でもある。
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