モダン・ホラーの帝王の私小説的作品
『シークレット ウィンドウ』(2004)
監督:デヴィッド・コープ
脚本:デヴィッド・コープ
キャスト:ジョニー・デップ
【作品内容】
売れっ子作家のモート・レイニー(ジョニー・デップ)は、離婚のいざこざが原因でスランプに陥っていた。
そんなある日、彼の前に、「自分の作品を盗まれた」と盗作を告げる謎の男ジョン・シューターが現れる。全く覚えがないモート。しかし、シューターの方は、盗作を世間に公表しろ、と執拗な嫌がらせを続ける。
やがて、シューターを見た者や正体を探る者が次々と謎の死を遂げていく。果たしてシューターは一体何者なのか?
【注目ポイント】
『ミザリー』(1990)や『シャイニング』(1980)など、数々の名作映画の原作者として知られる「モダンホラーの帝王」スティーブン・キング。そんな彼の私小説的作品を実写化したのが、この『シークレット ウィンドウ』だ。
原作はキングの中篇小説『秘密の窓、秘密の庭』(『Four Past Midnight』所収)で、監督は『スパイダーマン』(2002)『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023)の脚本で知られるデヴィッド・コープ。主人公のモート・レイニーをジョニー・デップが演じる。
小説家を主人公とした本作は、いわばキング自身の私小説と言えるだろう。現に、キングによると、本作は、自身が受けたいわれのない告発からインスピレーションを得たという。しかし、本作は、現実大きく異なる点がある。それは、主人公が二重人格であるという点だ。
そう、ジョン・シューターとは、他の男にうつつを抜かす妻を手にかけるためにモートが作り出した第二の人格だったのだ。つまり、モートは、自分自身が生み出した人格におびえ、翻弄されていたわけだ。
そして、この複雑怪奇な設定に説得力を与えるのが、ジョニー・デップの演技力だ。これまでのフィルモグラフィーを通して、海賊船の船長から障がい者を弟に持つ心優しい青年まで、さまざまな役を演じてきたジョニーだが、本作では複数の人格を見事に演じ分けている。
なお、キングは本作について「『ミザリー』『ダーク・ハーフ』で扱ったテーマに対して、異なるアプローチをした作品」と語っている。両作品とも実写化されているので、併せてご覧いただきたい。
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【了】