最も「花魁」役が上手かった女優は? 妖艶な演技が光る宝石5選。あふれ出る色気に目が釘づけ…カラダを張った名演をセレクト
text by 野原まりこ
大河ドラマ『べらぼう』で“伝説”の花魁に扮する小芝風花の堂々たる演じっぷりが話題を集めている。そこで今回は、映画やドラマにおいて、花魁役が最高だった女優を5人セレクト。美しいものに惹かれてしまう人間の性質は大昔から変わらない。名女優たちの艶やかな芝居の魅力に酔いしれてほしい。(文・野原まりこ)
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切なさと妖艶さが入り混じった見事な演技を披露
安達祐実『花宵道中』(2014)
監督:豊島圭介
脚本:鴨義信
原作:宮木あや子
出演:安達祐実、淵上泰史、小篠恵奈、友近、高岡早紀、津田寛治
【作品内容】
江戸時代。孤児だった朝霧(安達祐実)は遊郭「山田屋」に引き取られ、遊女となる。そんなある日、朝霧は染物職人・半次郎(淵上泰史)と出会い、生まれて初めて恋をする。
【注目ポイント】
「同情するなら金をくれ」でお馴染みのドラマ『家なき子』で鮮烈なデビューを飾った女優・安達祐実が、初の花魁役でオールヌードも辞さない体当たりの芝居を披露した本作。とはいえ、魅力はなにも安達祐実の裸体だけではない。
美しく可憐な花魁は、その内側にとてつもない闇を抱えている。安達演じる主人公・朝霧は、熱を帯びると体に赤い斑点が浮かび上がり、客に「花が咲く」と喜ばれ人気女郎となるが、その心は固く閉ざされていた。そして、生まれて初めて男(半次郎)と恋に落ちるが、津田寛治演じる客から好きな男の前で弄ばれ、辱しめを受けるシーンは壮絶だ。
体を張ったシーンはもちろん目を見張るものがあるが、艶やかの裏にある悲哀を感じさせるところに安達祐実の芝居の真髄がある。
男にモノとしてしか扱われない遊女を見ていると、もどかしい気持ちになる。生々しい描写に思わず目を背けたくなるが、切なさと妖艶さが入り混じった安達の表情は観る者の視線を惹きつけて止まない。
幼少期より芸能界の第一線で活躍し続けている安達祐実。酸いも甘いも噛み分けた彼女だからこそ、花魁の美しさと悲哀を巧みに表現し得た、と言えるだろう。