両親の演技力を引き継いだサラブレッド
石橋静河
2010年代後半以降、日本映画の良作で存在感を発揮し続けている石橋静香は、歌手で俳優の石橋凌と女優の原田美枝子を両親に持つ正真正銘のサラブレッドだ。黒澤明、神代辰巳、増村保造といった泣く子も黙る巨匠監督たちの作品で中心人物を演じた原田は、間違いなく日本映画史に残る女優の1人であり、とりわけ80年代の日本映画には欠かせないアクターであった。近年の石橋の快進撃は、80年代における母・原田美枝子の活躍を思わせるところがある。
1983年生まれの石井裕也監督作品『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017)で、第60回ブルーリボン賞・新人賞ほか、数々の賞を受賞した石橋は、『きみの鳥はうたえる』(2018)の三宅唱監督(1984年生まれ)、『あのこは貴族』(2021)の岨手由貴子(1983年生まれ)と、若い監督の作品で重要な役柄を任されており、彼女の演技は日本映画の新しい息吹を感じさせる。
ミステリアスな雰囲気を持つ石橋静香は、落ち着いた役柄を演じることが多い印象がある。どんな役でもこなす女優がいる一方、ある一分野に秀でた能力を持つ女優がいたっていい。その分、石橋の役にハマった時の爆発力は凄まじい。
彼女の活躍から目を離すことは、日本映画の現在を取り逃がすことにつながる。今後の活動に刮目を。