父娘が同じ食卓を囲んでいるだけ泣ける…。
『春になったら』(2024)
脚本:福田靖
出演:奈緒、木梨憲武、深澤辰哉、見上愛、西垣匠、影山優佳、矢柴俊博、光石研、橋本マナミ、筒井真理子、小林聡美、濱田岳
【作品内容】
助産師として働く椎名瞳(奈緒)は、腕利きの実演販売士である父・雅彦(木梨憲武)と2人暮らし。2024年の元日、2人は同時に「3か月後に結婚します」「3か月後に死にます」と報告しあう。
バツイチ子持ちの売れないお笑い芸人・川上一馬(濱田岳)と結婚すると譲らない瞳と、膵臓癌で余命3カ月の宣告を受け、治療をせずに残りの人生を楽しく暮らすことを決断した雅彦は、お互いに「やりたいことリスト」を作成し、残りの3カ月間で願いを実現していく…。
【注目ポイント】
3ヶ月後に結婚する娘×3ヶ月後にこの世を去る父による笑って泣けるハートフル・ホームドラマ。悲しいシーンではないときでも、いつの間にか涙が止まらなくなっている…というのが『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系)の不思議なところだった。
父・雅彦は、膵臓癌で余命3カ月の宣告を受けたものの、治療をしない選択をしたため、病状が良くなっていくことはない(治療をするか? しないか? についても、父と娘で意見が分かれて苦しかった)。そのため、瞳と雅彦が一緒に食卓を囲んでいるだけで、「あと何回、この姿が見られるのだろう…」と切ない気持ちになってくるのだ。
また、膵臓癌の末期でどれだけ苦しいときでも、雅彦は娘の前では明るい姿を見せ続けていた。そんなところに、父としての強さを感じて胸がギュッと締め付けられたのを覚えている。
“死”を取り扱う物語は、どうしても暗くなりがちだが、『春になったら』はただ暗いだけではない。人間、誰しもが訪れる“死”というものを、日常の延長線として描きながら、去る者と遺される者、双方にとって幸せな最期とはどのようなものなのか? を視聴者に問いかけてくる物語だった。
(文・菜本かな)
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