卓越したテクニックに裏付けされた声
鈴木愛理
―――続いては、℃-uteやBuono!のメンバーとして活躍し、現在は歌手として活動されている鈴木愛理さんです。
「鈴木さんは、とても高い技術力をお持ちですね。鈴木さんが在籍されていたハロー!プロジェクトの曲は、テンポが速い16ビートがメインですが、鈴木さんは舌周りの筋肉がとても柔らかいので、早口でもクリアに聞こえるんです。身体の使い方を熟知されている方とお見受けしました」
―――鈴木さんのご両親はプロゴルファーなので、運動神経の良さは、親譲りかもしれませんね。
「そうかもしれないですね。ただ、ハロー!プロジェクトは100%現場主義で、完成したパフォーマンスを披露するK-POPとは違い、客前でダンスを作り上げていくという印象があります。
そういう意味で、鈴木さんの歌唱力は、生まれつきの才能を努力で伸ばした結果だと思います」
―――確かに鈴木さんは、大学時代、音響学をテーマとした卒業論文が学会誌に掲載されるという偉業を達成しています。そういう意味では、生涯声と向き合ってきた「声の専門家」と言っても差し支えないかもしれないですね。
「そうですね。ただ、鈴木さんの歌は、感情表現が少し平板なのが気になります」
―――感情表現、ですか。
「はい。演技もそうですが、観客を感動させるにはやっぱり表現者自身が感情を込める必要があります。ただ、感情を豊かにするには、友達と遊んだり、恋愛したりといった、日常で味わうであろうちょっとした出来事、私たちにとっては当たり前に感じる経験が必須なんです。」
―――なるほど、ボイストレーニングに時間を費やすほど、人生経験の機会が失われてしまうと。
「はい。ただ、鈴木さんは、とても頭がいい方なので、今後さらに技術を磨けば、感情もロジカルに表現できてしまうかもしれないですね」