岩田剛典の勢いが止まらない…名監督が「聡明な人」と評した演技の魅力とは? 俳優としての稀有な特徴を深掘り解説

text by 加賀谷健

三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEおよびEXILEのパフォーマーである岩田剛典。出演作『空に住む』のメガホンを取った故・青山真治は、岩田を「聡明な人」と評した。今回は岩田の役者としての魅力を、過去の出演作から紐解く。(文・加賀谷健)

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【著者プロフィール:加賀谷健】

コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修

クラシック音楽を専門とする音楽プロダクションで、企画・プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメン研究」をテーマに、“イケメン・サーチャー”として、コラムを執筆。 女子SPA!「私的イケメン俳優を求めて」連載、リアルサウンド等に寄稿の他、CMやイベント、映画のクラシック音楽監修、解説番組出演、映像制作、 テレビドラマ脚本のプロットライターなど。

2025年から、アジア映画の配給と宣伝プロデュースを手がけている。
日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。

「振り返る人」岩田剛典

岩田剛典公式Instagramより

 今でもはっきり記憶している。『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』(2022、以下、『バスカヴィル家の犬』)のインタビューで岩田剛典に初対面したとき、作品についておさえるべき事柄はそこそこに、ぼくはひとつの質問を投じた。

 質問というにはインタビュアーの主観があまりに強かったかもしれない。岩田演じる元医者の探偵助手・若宮潤一がクライマックスで車の荷台から丘の上の屋敷を振り返る場面がある。新婦を奪還しようとする軽妙な元彼を演じた『ウェディング・ハイ』(2022)でも後部座席の車窓から結婚式場を見送る印象的なスローモーションがあり、両場面をセットとして考え「岩田さん、あなたは振り返る人を演じているのでは?」と聞いたのである。

 演じる本人が作品間のこんな些細な共通点に意識的であるはずがない。「振り返る人」などという勝手な命名に対してどう思ったのか、ぼくの方へパッと眼差しを向けて「なるほど」と深い感嘆まじりにうなづいたのだ。あのときの一瞬の視線移動と強い眼差しは忘れがたい。

 その「なるほど」が本人の同意を意味するものだったかはわからないが、それ以来ほんとうにありがたいことにご縁がつながった。

 2024年3月6日にリリースされたソロ2ndアルバム『ARTLESS』Blu-ray特典映像の聞き手を依頼され、収録中は上述したインタビューから2年近く温めた命名の数々を細かく確認する場と化していたと思う。

 同アルバムを引っ提げた『Takanori Iwata LIVE TOUR 2024 “ARTLESS”』では初日の公式ライブレポートを担当する名誉仕事も得たが、その都度じっくり定点観測してもいられないほど、岩田剛典をめぐる命名とそれに基づく主題の変化は現在進行形で目まぐるしいものである。

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