実在の殺人犯を演じた俳優、最も演技が上手かったのは? 鬼気迫る名演5選。戦慄を覚えるほどの芝居で魅せた役者をセレクト
ニュースで報道されるたびに日本社会を震撼させる殺人事件。その犯人たちは、新聞やネットを騒がせるのみならず、しばしば映画やドラマの題材になってきた。そこで今回は、実在の殺人犯を演じた役者を5人セレクト。視聴者の背筋を凍らせた、迫真の芝居の魅力を解説する。(文・阿部早苗)
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【著者プロフィール:阿部早苗】
神奈川県横浜市出身、仙台在住。自身の幼少期を綴ったエッセイをきっかけにライターデビュー。東日本大震災時の企業活動記事、プレママ向けフリーペーパー、福祉関連記事、GYAO トレンドニュース、洋画専門サイト、地元グルメライターの経験を経て現在はWEB媒体のニュースライターを担当。好きな映画ジャンルは、洋画邦画問わず、社会派、サスペンス、実話映画が中心。
ドキュメンタリーを見ているかのようなリアリティ
大竹しのぶ『実録 福田和子』(フジテレビ系、2002)
日本犯罪史上、最も有名な逃亡者の一人として知られている福田和子。1982年に愛媛県松山市で発生したホステス殺害事件の犯人として指名手配され約15年近くも逃亡を続けた。彼女の特集がテレビで放送されたことが逮捕のきっかけだったという。
その後、福田の人生は何度も映画やドラマ化がされているが、ドラマで最初に福田和子を演じたのは大竹しのぶだった。2002年に放送されたドラマ『実録 福田和子』(フジテレビ)は、福田和子本人の手記と独自取材、さらに調査を重ねて脚色を加えずに制作されたそうだ。
ドラマでは17歳で家出をしてから強盗で捕まり刑務所に。出所後に元やくざとの結婚で一男一女をもうけた過去や、結婚後は借金に追われホステスになり、やがて同僚のホステスを殺害したことで彼女の逃亡劇が始まる。
大竹しのぶ版か、のちに福田和子を演じた寺島しのぶ版か…。福田の人生に材をとった映画や再現ドラマが放送される度に、様々な女優の名が挙がり、誰の芝居が最も迫真的だったのか評価は分かれるが、SNS上では「大竹しのぶ版は、FNSサスペンスドラマの本気を魅せてくれたから怖かった」「私の中でザ・ベストオブ福田和子は大竹しのぶ」「福田和子のドラマは大竹しのぶのやつが秀逸だった気がする」と大竹の芝居を絶賛する声が多く見受けられる。
筆者も同ドラマを当時鑑賞したが、逃亡者としての孤独や焦燥感が繊細に表現されており、ふとした話し方や態度にも深いこだわりが感じられた。まるでドキュメンタリーを見ているかのようなリアリティがあり、登場人物の内面が生々しく伝わってきたのだ。
表情や動きひとつひとつが複雑な感情を見事に表現しており、物語にさらなる深みを与える。ドラマ史に残る名演だと言っていいだろう。