己の正義を貫く役がよく似合う
清野菜名『119 エマージェンシーコール』(フジテレビ系)
映画『TOKYO TRIBE』(2014)や『キングダム』シリーズ、ドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)などでアクションのイメージが強い清野菜名には、己の正義を貫く役がよく似合う。
今回、『119 エマージェンシーコール』(フジテレビ系)で清野が演じている粕原雪も、例に漏れず確固たる信念を持っている人物だ。「火事ですか? 救急ですか?」と問いかける粕原の声は、緊迫感のなかにも柔らかさがあって心地よい。
それでいて、一度聞いた声や音は忘れないという特殊能力のようなものを持っている(これに関しても、なぜか清野が演じると説得力がある)ため適正は十分なのだが、よりよい管制員になるべく通報現場を訪れるなど周囲と足並みがそろわないこともしばしば。
管制員としての本分は、電話口のみの対応だ。救急隊員が現場へ到着すれば、そこで仕事は終わってしまう。ゆえに、画としてはたしかに地味である。それでも、“助けたい”という想いは現場の隊員たちと変わらない。
第4話で描かれた「絶対に助ける!」という声掛けをめぐるエピソードは、医療ものなどでも時折ご法度として扱われることがある。100%なんてない、だから易々と口にすべきではない言葉。でも、それは本当に言ってはいけない言葉なのかと悩む。
最後は、「助けたい」と思ってしまったのなら、その想いは誰にも止めることはできないという結論に行き着く。明確な答えではないものの、感情の存在する言葉は人の心に届く、ということなのだろう。
自分の正義を現場に合う形に整えるよう思慮深く進む粕原を、清野が着実に作り上げている。画としての派手さこそないものの、学びの多い良作になっているのは管制官たちの心を描けているからに他ならない。