こんなに面白いのになぜ爆死…? 低視聴率ドラマの隠れた名作5選。早すぎた傑作…後に再評価された作品をセレクト
ドラマを評価する指針の1つが視聴率。しかし、良質な作品が必ずしも高視聴率とは限らないのが難しいところだ。今回は、放送当時は低視聴率だったものの、ドラマファンから面白いと太鼓判を押された民放ドラマを5本セレクト。視聴率が伸び悩んだ理由も解説しつつ、時代に埋もれてしまった隠れた名作を掘りおこす。(文・阿部早苗)
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セクハラや女性蔑視の問題に容赦なく切り込んだ、早すぎた名作
『問題のあるレストラン』(2015、フジテレビ系)
監督:坂元裕二
脚本:並木道子、加藤裕将
キャスト:真木よう子、東出昌大、二階堂ふみ、高畑充希、松岡茉優、臼田あさ美、YOU、安田顕、菊池亜希子、風間俊介、菅田将暉、杉本哲太、吹越満、藤田弓子
【作品情報】
大手飲食サービス会社に勤めていた田中たま子(真木よう子)は、勤務先のレストランで起きた不祥事が原因で退職する。その後、友人や元同僚と共に「ビストロ フー」を開店。さまざまな困難に見舞われるが、次第に評判を呼ぶようになる。
【注目ポイント】
ドラマと映画を股にかけて活躍する当代屈指の売れっ子脚本家・坂元裕二。そんな坂元の美点がたっぷり詰まった2015年放送の『問題のあるレストラン』は、平均視聴率が9%台と、『東京ラブストーリー』(1991、フジテレビ系)で社会現象を巻き起こした男が手がけた作品とは思えない、低調な記録をたたき出したドラマである。放送当時、SNSではあまりの視聴率の低調ぶりに疑問の声もあがるほどだった。「こんなに面白いのに!」と。
パワハラ、セクハラ、モラハラと、女性軽視に根ざしたトラブルに容赦なく切り込んでいく内容は先進的という他なく、物語の面白さもさることながら、フェミニズムドラマの先駆けとしても高く評価されている。
一方で、高畑充希演じる藍里のように「女の価値は、人生でいくら奢って貰ったかで決まるから。割り勘は女の敗北」という考えの女性も登場する。しかし、男ウケを狙い、セクハラも笑顔で上手くかわしているように見える藍里もまた、社会で上手く生き抜くために我慢を強いられている。そんな彼女もまた、主人公の言葉によって助けられるのだ。
たま子が生きづらさを抱える女性たちに贈る言葉の数々は、本作の最大の魅力だろう。彼女の言葉は、”女性たるものこうでなくてはならない”といった凝り固まった価値観を揺さぶり、自分らしく生きることの大切さや、理不尽な要求に否を突きつけることの重要性を教えてくれる。
そんな本作の評価と認知度は今後、さらに上がっていくに違いない。