多様性の枠をはみ出す人間たちを描いたクドカン最高傑作
『季節のない街』(2023)
原作:山本周五郎
企画:ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社(協力)
脚本:宮藤官九郎
監督:宮藤官九郎、横浜聡子、渡辺直樹
出演:池松壮亮、仲野太賀、渡辺大知、三浦透子、濱田岳、増子直純、荒川良々、MEGUMI、高橋メアリージュン、皆川猿時、又吉直樹、前田敦子、塚地武雅、YOUNG DAIS、大沢一菜、奥野瑛太、佐津川愛美、小田茜、坂井真紀、片桐はいり、広岡由里子、LiLiCo、藤井隆、鶴見辰吾、ベンガル、岩松了
【注目ポイント】
2023年8月にディズニープラスで配信され、2024年4月期に地上波放送された本作は、黒澤明監督が1970年に『どですかでん』のタイトルで映画化した山本周五郎の小説『季節のない街』を現代にリブートさせた人間ドラマだ。戦後のバラック街を、12年前に起きた大災害を経て建てられた仮設住宅のある“街”に置き換えて現代の物語として再構築されている。
ある人に命じられて仮設住宅にやってきた半助(池松壮亮)、仮設住宅で母と妹弟と4人で暮らしているタツヤ(仲野太賀)、リカーショップで働くオカベ(渡辺大知)を中心に物語が展開されていく本作。
3人とも変わってはいるが、まだ常識がある方で、この仮設住宅に住んでいる人たちは同じくクドカン作品のタイトルを借りるなら『不適切にもほどがある!』な人ばかりだ。お互いの妻を交換する土木作業員、妻が浮気で作った子どもたちを育てる夫、息子に物乞いをさせるホームレスの父親、他人の悪口や噂話で盛り上がる主婦たち。
彼らを見ていると「真の弱者は助けたくなるような姿をしていない」という言葉が頭をよぎる。
そんな現代の多様性の枠からもはみ出てしまうような人たちの日常を美化することなくありのまま愛を持って描いている本作はクドカンの最高傑作と言っても過言ではない。
クドカンが自身の作品で折につけて描いてきた震災を決して風化させないという思いも伝わってくる作品だ。