“なかったこと”にされた問題作
『ターミネーター3』(2003)
監督:ジョナサン・モストウ
キャスト:アーノルド・シュワルツェネッガー、ニック・スタール、クレア・デーンズ
【作品内容】
サラとT-800と共に「審判の日」を回避してから10年。使命を終えたジョン・コナーは放浪生活を送り、新たな人生を模索していた。しかし、スカイネットの脅威は消えておらず、新型ターミネーターが再び彼の命を狙い現れる…。
【注目ポイント】
1984年に登場した『ターミネーター』シリーズは、機械による支配というディストピアを描きながらも「未来は変えられる」という希望のメッセージを貫いた極めて稀有な作品だった。なかでも1991年の『ターミネーター2』は、アクションとドラマ、そしてメッセージ性が見事に融合した名作として今もなお映画史に残る。
しかし、その流れを受け継ぐはずだった『ターミネーター3』(2003)は、シリーズの中で唯一、ファンから批判的な評価を受ける作品となってしまった。
最大の要因はシリーズの生みの親であり、前2作を監督したジェームズ・キャメロンの不在である。彼が完全に手を引いたことで、物語の核にあったテーマは影を潜めアクション主体の娯楽色が前面に押し出される結果となった。
ストーリー面でも、ファンの期待を裏切る展開が続く。『T2』で描かれた「人類は未来を変えられる」という希望は、『T3』において「審判の日は不可避だった」と覆され、これまでの登場人物たちの努力が無意味だったかのように描かれている。
さらにキャラクター面でも不満の声は多い。ジョン・コナーを演じたニック・スタールは、これまでの強い意志を持ったリーダー像とはかけ離れ、意志の弱い青年として描かれている。加えて、彼の年齢設定や過去との時系列にも矛盾が見られ、シリーズ全体の整合性に疑問が残る。
こうした背景から、『T3』はシリーズの中で事実上「なかったこと」にされた。2019年に公開された『ターミネーター:ニュー・フェイト』では、ジェームズ・キャメロンが製作に復帰し、『T2』の直接的な続編として物語が再構築されたのだ。このとき、『T3』以降の出来事は別の未来として扱われ、公式にもシリーズの正史から外されることとなった。