「胴体両断の決死行」──黒死牟との壮絶な死闘
時透無一郎
【注目ポイント】
霞柱・時透無一郎は、わずか2か月で柱にまで上り詰めた天才剣士であり、「日の呼吸」の継承者を先祖に持つ少年である。無垢な外見とは裏腹に、類まれな才能と冷静な戦術眼を備えた無一郎の最期は、第19巻から始まる無限城編における、上弦の壱・黒死牟との死闘で描かれる。
無限城で初めて黒死牟と対峙した無一郎は、生まれて初めて“恐怖”という感情に支配される。圧倒的な格の違いに、一対一の戦闘では太刀打ちできず、月の呼吸によって左腕を斬り落とされてしまう。
やがて、不死川玄弥、風柱・不死川実弥、岩柱・悲鳴嶼行冥が加勢し、総力戦に突入。しかし、黒死牟の本気にはなおも及ばず、戦況は厳しさを増していく。
そんな中、無一郎は自身の死を覚悟し、決死の覚悟で黒死牟の懐に飛び込む。全身から刃を放つ凶悪な攻撃を受けながらも、片時も離れず食らいつき、敵の動きを封じ続けた。
その代償はあまりにも大きく、彼の体は胴体から真っ二つに両断されてしまう。それでもなお、無一郎は最後の一瞬まで剣士としての意志を貫き通した。
自らの命を盾にして仲間の勝機を生み出したその姿は、言葉では言い尽くせないほど壮絶で、尊い。時透無一郎の死は、鬼殺隊の“勝利の礎”として深く刻まれており、読者に強烈な衝撃と涙をもたらした忘れがたい名シーンである。