物語とキャラ描写が台無しに? カット編集の波紋
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002)
監督:クリス・コロンバス
脚本:スティーヴ・クローヴス
原作:J・K・ローリング
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ケネス・ブラナー、ジョン・クリーズ、ロビー・コルトレーン
【作品内容】
ホグワーツの2年生になったハリー(ダニエル・ラドクリフ)は、屋敷しもべ妖精ドビーに「学校に戻ってはいけない」と忠告されるが、学校へ向かう。やがて「殺してやる」という謎の声が響き、マグルの生徒たちが石にされる事件が起こる。
【注目ポイント】
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002)は長尺(本編約161分)であるため、金曜ロードショーでは多くの場面が容赦なくカットされてきた。だが、それが原因でストーリーの流れやキャラクター描写に支障をきたしているとして、視聴者の間でたびたび不満が噴出している。
象徴的なのが、序盤の“ノクターン横丁”のくだり。フルーパウダーを使って目的地の「ダイアゴン横丁」に行こうとしたハリーが、発音ミスによって闇の市場・ノクターン横丁へ迷い込む重要シーンである。ここではマルフォイ親子との因縁が深まる一方で、魔法界の“裏の顔”が垣間見える描写でもある。
しかし、地上波ではこのシークエンスがまるごと削除され、煤まみれのハリーが唐突に店の前に現れる構成に。シリーズを初めて観る視聴者にとっては、唐突すぎて意味不明な展開となってしまう。
他にも、ロンがクラッブに変身した際の「低音ボイスのモノマネ」や、ハーマイオニーとロンの“ハグ未遂事件”など、ファンに愛される細やかな演出が軒並みカットされている。特に後者は、シリーズを通して関係性が進展していく2人の初期の距離感を示す名場面であり、削られるには惜しいエピソードだ。
こうした編集に対し、視聴者からは「カットの仕方は賢者の石よりもひどい」「金ローのハリーポッターはカットしすぎて話が入ってこない」といった批判が相次いでいる。約161分ある本編を地上波の放送枠に収めるには、説明的なシーンやサブエピソードが削られるのは仕方ない部分もあるが、物語の魅力やキャラクター描写に関わる場面まで省かれてしまえば、ファンの不満が高まるのも当然だろう。
それでも、せめてシリーズの名場面やキャラクター同士の関係性が伝わるような編集がなされることを、多くのファンが期待している。