カットしすぎで最早ダイジェスト

『フェイス/オフ』(1997)

映画『フェイス/オフ』
映画『フェイス/オフ』【Getty Images】

監督:ジョン・ウー
脚本:マイク・ワーブ、マイケル・コリアリー
出演:ニコラス・ケイジ、ジョン・トラヴォルタ、ジョアン・アレン、ジーナ・ガーション、アレッサンドロ・ニヴォラ、ニック・カサヴェテス、ドミニク・スウェイン、コルム・フィオール

【作品内容】

 FBI捜査官アーチャー(ジョン・トラボルタ)は、息子を殺したテロリスト・トロイ(ニコラス・ケイジ)を逮捕する。しかし、街に仕掛けた爆弾の在処を探るため、トロイの顔を移植し潜入捜査に挑む。

 だが目覚めたトロイが逆にアーチャーの顔を奪い、立場が逆転。壮絶な攻防が始まる。

【注目ポイント】

 ジョン・ウー監督によるガン=フー(銃撃戦×武術)の真骨頂とも言える本作は、スタイリッシュな演出と主演2人の怪演で、今なお語り継がれるアクション名作である。

 しかし、地上波放送──特に金曜ロードショー──では、あまりに容赦のない編集により、物語そのものが崩壊寸前となってしまう。

 例えば、ラストで大きな意味を持つ冒頭シーンの丸ごとカットや、父親ショーンが娘にナイフを手渡す物語上の重要シーンもカットされており、その他のシーンにおいても挙げだしたらきりがなくSNSでは「カットのしすぎでダイジェストみたいになってる」という声まであるほど。

 本編138分に対し、地上波の放送枠は限られている。放送尺に合わせた本編カットは、伏線の回収や心理戦の緊張感すら奪い去る。

 SNSでは「冒頭がなくて誰が誰か分からない」「展開が唐突すぎてついていけない」といった戸惑いの声に加え、「一度も観たことない人が観たら意味わからないと思う」といった不満が飛び交う。

 もちろん、地上波には時間の制約がある。だが、映画の核となる場面まで容赦なくカットされてしまっては、作品本来の魅力は視聴者に伝わらない。ジョン・ウーが仕掛けた名場面や心理戦を味わうには、やはりノーカット版を観るしかない。

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