日本版よりも面白い…!? 名作ドラマの韓国版リメイク5選。オリジナルと全然違う…大ヒット作を翻案した作品をセレクト
日本でヒットしたドラマが韓国でリメイクされる例は年々増加しており、物語の構造はそのままに、演出・人物設定・社会背景などが大胆にローカライズされることで、まったく異なる魅力を放つ作品も少なくない。日本で話題となった5本のドラマが、韓国でどのように再構築されたのかを比較・解説。それぞれのリメイクが持つ意義と、日韓ドラマ文化の“違いと共鳴”を掘り下げる。(文・阿部早苗)
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ミステリアスな家政婦が映す“家族”の文化差
『家政婦のミタ』(日本テレビ、2011)
→韓国版『怪しい家政婦』(2013)
脚本:遊川和彦
キャスト:松嶋菜々子、長谷川博己、相武紗季、忽那汐里、中川大志
【日本版の作品内容】
妻を亡くした恵一(長谷川博己)は、四十九日を迎えたのを機に、家政婦の三田を雇う。家事は完璧、子供たちへの対応も申し分ない。しかし、その一方で三田(松嶋菜々子)のどこか謎めいた雰囲気に、恵一は次第に違和感を抱くようになる。
【注目ポイント】
2011年、日本中に衝撃を与えたドラマ『家政婦のミタ』は、松嶋菜々子の鬼気迫る演技と、“承知しました”の決まり文句で話題をさらい、最終回では驚異の視聴率40%超を記録。その社会現象とも呼べるヒット作が、2013年に韓国で『怪しい家政婦』としてリメイクされた。
まず目を引くのは、主人公像の違いだ。日本版の三田は、無表情・無感情を貫き通すことで、その内側に抱える深い傷を際立たせていた。表情を一切変えず、命令に忠実に従うという“感情の不在”が、むしろ観る者の感情を揺さぶった。
一方、韓国版でチェ・ジウが演じたパク・ボンニョは、同じく完璧な家政婦ではあるものの、物語が進むにつれて涙を流したり、感情を垣間見せたりと、人間味が強く描かれる。これは「涙の女王」と呼ばれるチェ・ジウのイメージに合わせた演出とも言われ、韓国ドラマならではの情緒的な演技が加えられた結果といえる。
また、韓国版では子どもたちの海外留学に母親も同行しており、妻が留守の間に父親のウン・サンチョル(イ・ソンジェ)が不倫。その事実を知った妻は、深い傷を抱えたまま異国の地で亡くなり、子どもたちが韓国に戻ってくる…という日本版とは異なる設定となっている。
次にストーリー構成の違いにも注目したい。日本版は全11話とコンパクトにまとめられていたのに対し、韓国版は全20話。これにより、物語は家族再生の物語だけではなく、オリジナルのエピソードも追加され、ドラマの雰囲気はより波乱含みのものになった。
日本版が国民的ヒットとなった一方で、韓国版は視聴率が平均11%台と伸び悩み、同じ家政婦がテーマでも、国が違えば、家族観も倫理観も違う。どう自国の文化や視聴者の感性に寄せていくか。その微妙なバランス感覚こそが、リメイクの成否を左右するのかもしれない。