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邦画界最強の“役者バカ”は誰…? 壮絶な役づくりに挑んだ日本人俳優5選。名優たちの過酷な肉体改造エピソードをセレクト

自分以外の人間を演じる“俳優”。彼らは時に、我々には想像を絶する役作りをしている。人を感動させるためだけに作られる映画に、体の一部や生活を差し出してまで演じるということは、一体どういうことなのだろうか。そしてその映画は我々に何をもたらしてくれるのか。今回は、俳優が壮絶な役作りをした映画を5本セレクトして紹介する。(文・野原まりこ)

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歯を9本抜いてチンピラ役を完璧に体現

北村一輝『JOKER 厄病神』(1998)


出典:Amazon

原作:鵜川英司
監督:小松隆志
出演:渡部篤郎、萩原健一、萩原流行、宇梶剛士、北村一輝、片岡礼子

【作品内容】

金町恒産の村越(萩原健一)は、かつて大石翠会のヒットマンを射殺した。7年の刑期を終えて帰ってきた村越により、再び緊迫する2つの組織。

村越を“疫病神”と恐れる金町恒産の常務・新良(萩原流行)は、若い組員のヒロシ(渡部篤郎)を村越のそばにつけることにする。心臓の病を患っており、親から“疫病神”と罵られて育ってきたヒロシは、村越に親近感を覚え…。

【注目ポイント】

北村一輝
北村一輝Getty Images

本作での北村一輝は、渡部篤郎演じるヒロシの弟分という役どころ。北村は、はっきりした顔立ちの自分がどうすればチンピラに見えるのか考え抜き、「食べ方の品のなさやお箸の持ち方に育ちが出るのでは」と考え、その際に歯が揃っていたら変だと思い、健康な歯を9本抜き、4本は削ったと語っている。

この頃の北村は29歳。常人であれば健康な歯を抜いてしまうことに抵抗感を抱きそうなものだが、北村は「観客が喜ぶのであれば、どうでもいい」と、歯を抜くことを迷わなかったという。抜歯を担当した歯科医はさぞかし戸惑ったことだろう。

異常なまでの役作りが功を奏して、普段のキリッとした顔からは想像つかない、締まりのない表情をみせることに成功。渡辺篤郎がスマートに演じたヤクザ・ヒロシと対照的な、だらしのないキャラクターを見事に演じてみせた。

体を張った役づくりという点以外でも、ニヤニヤとしたいやらしい笑い方や、クセのあるイントネーション、落ち着きのない体の動きなど、考え抜かれた芝居で“しがないチンピラ”を体現。役者としての実力の高さを世間に知らしめた。

本作で強烈なインパクトを残した北村は、その後も着実にキャリアを重ねていく。本気の役づくりはその後の作品でも継続され、ゲイバーのママに扮した1998年公開の『鬼火』(望月六郎監督)では、店に通うお金がなかったため、新宿2丁目の街頭に立ち、男娼かと思って声をかけてきた客にバーに連れて行ってもらったという。

何番手の役だろうと気を抜かずに挑む。北村一輝の映画への熱い想いは、どの出演作からも感じることができるだろう。

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