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日本最高のボクシング映画は…? 素晴らしき傑作5選【邦画編】究極の人間ドラマに心打たれる名品だけをセレクト

血や汗や情熱やロマンが入り混じる、泥臭くも美しいスポーツ、ボクシング。そんなボクシングを題材にした映画は、日本国内で今も昔も製作され続けており、有名監督や人気俳優、実力派女優らも多く関わっている。故障や病、障害、栄光と挫折などを描き、観る者の心を揺さぶる史上最高のボクシング映画を、今回は邦画に絞って5本セレクトした。

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元世界王者たちが出演する貴重なボクシング映画

『どついたるねん』(1989)


出典:Amazon

上映時間:110分
監督・脚本:阪本順治
原作:赤井英和
キャスト:赤井英和、相楽晴子、原田芳雄、麿赤児、大和武士、笑福亭松之助、正司照枝、芦屋小雁、輪島功一、結城哲也、大和田正春、美川憲一、ホープユタカ、ハイヒールモモコ

【作品内容】

世界タイトルの前哨戦として組まれた試合で、安達英志(赤井英和)はKO負けした上に、意識不明の重体に陥る。

急性硬膜下血腫、脳挫傷と診断され、一命を取り留めるが、再びリングに上がることを禁じられてしまう。そして、その粗野な性格が災いし自暴自棄の生活に陥る。

自らジムを立ち上げ、トレーナーとして再出発を図るが、自らのファイトスタイルを押し付ける指導法に、周囲の人は、一人また一人と英志の元を去っていき、ジム経営は早々に行き詰ってしまう…。

【注目ポイント】

阪本順治監督
阪本順治監督Getty Images

「赤井英和」の名前を聞いて、タレントとしてのイメージを持つ人は多いだろう。また、今秋に引退する予定の人気女子プロレスラー・赤井沙希の父という印象を持つ人もいるかもしれない。

しかし、赤井自身は、「浪速のロッキー」の異名を取る活躍を見せ、一世を風靡した元ボクサーである。豪快なファイトスタイルと巧みなフットワーク、歯に衣着せぬビッグマウスで人気を博し、将来を嘱望されたが、世界タイトルマッチで惜しくも敗戦。その後、再起戦でもKO負けを喫した上、意識不明の重体に陥り、死の淵をさまよった。

本作は、そんな波乱万丈な赤井のボクサー人生を基に、同じく大阪出身である阪本順治が監督・脚本を務めた、後に、日本を代表する映画作家となる阪本のデビュー作だ。

俳優としては全く実績のない元ボクサーと新人監督の組み合わせによる本作は、公開当初、映画館での上映ができず、原宿に特設テントを設置して公開されたが、口コミで評判が広がり、劇場公開され、ブルーリボン賞では作品賞を受賞。キネマ旬報ベストテンでは、初監督作品としては異例の第2位に選ばれるという快挙を達成した。

俳優としては新人であり拙い面も見られるが、ボクシングシーンでは“さすが”の動きで観る者を魅了する赤井。輪島功一、渡辺二郎、六車卓也といった元世界王者も出演。リアリティーあふれる作品に仕上がっている。

さらに、阪本順次監督のリアル志向は配役にもあらわれており、冒頭で主人公が敗れる相手役は、実際に赤井を引退に追い込んだボクサー・大和田正春が演じている。フィクションとドキュメンタリーを行き交うようなスリリングな演出も無二の魅力だろう。

赤井と阪本の、その後の活躍は巷間知られている通り。低予算で製作され、テントで上映された本作が、2人の活躍の原点なのだ。

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