実は殺していなかった！？
映画史に残る“最恐主人公“の意外な顛末

『アメリカン・サイコ』（2000）

【作品内容】

1980年代、ニューヨーク。ウォール街の証券会社P＆Pの副社長として働くパトリック・ベイトマンは、頭脳明晰で容姿端麗と、非の打ち所がないエリートサラリーマンだった。

高級マンションに住み、美しい女性との婚約を控えるなど、社会的な成功を手に入れていた彼だったが、空虚感と劣等感にさいなまれていた。そして、そんな彼の心の奥に秘めた殺人衝動がうずきはじめる…。

【注目ポイント】

エリートサラリーマンと殺人鬼という2つの顔を使い分ける男の顛末を描いた本作。そのショッキングで暴力的なあらすじは、大きな話題を呼んだ。しかし、本作は、観客をけむにまくような展開で幕を下ろす。

本作のラストでは、ベイトマンが自身の顧問弁護士に電話し、自分が何十人も殺したことを自白する。しかし、弁護士は、彼の発言を一蹴。さらに、その後、彼が手にかけたはずのポール・アレンが実は生きていたことに気づく。

このラストは、本作が、ベイトマンが頭の中で作り出した妄想であることを示唆している。しかし、だとしても、全ての殺人が彼の妄想の産物かどうかは不明だ。仮に全てが彼の妄想だったなら、スリルあふれる警察の追跡のくだりは、全て無意味なものになってしまうだろう。