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本物のヤクザと見間違える程の凄み
名優たちの迫力満点の競演

『仁義なき戦い 広島死闘篇』(1973)

菅原文太
菅原文太Getty Images

上映時間:100分
監督:深作欣二
原作:飯干晃一
脚本:笠原和夫
キャスト:菅原文太、北大路欣也、山城新伍、千葉真一、金子信雄、成田三樹夫、室田日出男、八名信夫、梶芽衣子、小松方正、川谷拓三、前田吟、松本泰郎、司裕介、木村俊恵、名和宏

【作品内容】

戦後間もない広島を舞台に、実在した伝説のヤクザ・美能幸三をモデルに、1950年頃から約2年にも渡る「広島抗争」を描いている。

元読売新聞社の社会部副編集長を務めた飯干晃一の、綿密に取材された原作を基にしており、広島最大の暴力団となった村岡組と反発勢力の大友組との抗争、そして村岡組の裏切りを描いた暴力団抗争の実録作品であり、この半年前に公開された前作『仁義なき戦い』(1973)の主役だった広能昌三(菅原文太)は仮出所して、この抗争を見守るような立場となっている。

【注目ポイント】

本作の主人公である“殺人鬼”と呼ばれた山上光治がモデルとした哀しきヒットマン・山中正治を北大路欣也が演じ、対立する大友勝利を千葉真一が演じ、その名優たちの競演と迫力満点の抗争場面により大ヒットし、その後の任侠映画のモデルケースとなった作品でもある。

監督の深作欣二は、ロケを広島で行うことを熱望していたが、当時、広島抗争はまだ終わっておらず、広島県警はこれを許可しなかった。

しかし、これを聞いた広島県出身の東映・岡田茂社長が直接、公安に掛け合い、県警に頼みこんで撮影許可が降りたというエピソードが残されている。撮影時は私服警官が現場の警備にあたったが、マル暴担当刑事と本物のヤクザとの見分けがつかず、ヤクザに囲まれて撮影しているみたいだったと、深作は後に語っている。

1作目『仁義なき戦い』、本作、3作目となる『仁義なき戦い 代理戦争』、4作目『仁義なき戦い 頂上作戦』、そしてシリーズ最終作『仁義なき戦い 完結編』と、深作欣二が手がけた5本の作品は甲乙つけがたく、すべて傑作と言っていい。とはいえ、なかでも2作目となる『広島死闘篇』はシリーズ最高傑作として名高い。

その理由は数あれど、シリーズ全体でも1、2を争う人気キャラ・大友勝利の登場および、演じ手である千葉真一(当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった)の気迫の名演技に触れないわけにはいかない。手には常に木刀を持っており、少しでも癪に触ると手当たり次第に暴力をふるう…日本映画史上最狂の登場人物と言っても過言ではないだろう。

サブキャラクターによる八面六臂の活躍が魅力の『広島死闘篇』。主役の菅原文太の出番は相対的に少ない(シナリオを読んだ菅原がゴネたというエピソードも残されている)のはネックだが、逆に言うと、主演俳優の力に頼らず、シナリオ、脇役、小道具、衣装、ロケ地など映画を構成するすべての要素を輝かせることで、力強い作品を成立させていると言える。

未見の方はぜひ見てみてほしい。

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