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今、最も演技が上手い20代女優は? 日本映画界の未来を担う逸材5選。芝居に定評のある天才をセレクト&魅力を深掘り解説

若手女優戦国時代の今、容姿や個性などに特徴を持つ女優も強いが、シンプルに演技に長けている女優はどれほどいるだろうか? 芝居の上手い俳優が出演する作品は、なぜか心に残り続け、私たちの心を癒すものだ。そこで今回は、今最も演技が上手い20代の女優を5人セレクトして、おすすめの映画と併せてご紹介する。(文・野原まりこ)

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“演技が上手い若手女優”の筆頭

杉咲花

女優・杉咲花【Getty Images】
女優杉咲花Getty Images

演技が上手い若手女優を思い浮かべた時、真っ先に名前が挙がるのが杉咲花ではないだろうか。

幼少期から芸能活動を開始した杉咲は、18歳で中谷美紀主演映画『繕い裁つ人』(2015)、佐藤浩市主演映画『愛を積むひと』(2015)、RADWIMPS・野田洋次郎主演映画『トイレのピエタ』(2015)に出演し、第7回TAMA映画賞や、第37回ヨコハマ映画祭などで新人賞を受賞。

その後、宮沢りえ主演映画『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)では、第41回報知映画賞・助演女優賞や、ブルーリボン賞・助演女優賞などをはじめとした数々の名誉ある賞を受賞した。

『湯を沸かすほどの熱い愛』では、いじめを苦にして不登校となった気の弱い少女・安澄に扮し、母の激励によって勇気を振り絞っていじめに立ち向かうという内面の変化が激しい難役を見事に演じた。

中でも、安澄がクラスメイトに制服を隠され、学校へ行きたくないと母に訴えるが無理やり布団を剥ぎ取られて「学校へ行きなさい」と激昂されるシーン。さらに、いじめに抵抗するため、クラスメイトの目の前でジャージを脱ぎ、下着姿になって「制服を返して」と訴えるシーンは圧巻。震える足で立ち上がる姿に観ていて胸が苦しくなるほどだ。

「映画さながらのクオリティー」と好評を博すカンテレ制作のドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(2024)で“記憶障害の脳外科医”を演じ、確かな演技力がより広くお茶の間に浸透しつつある杉咲花。ここでは、そんな彼女が女優として成熟をみせた、飛びっきりの一本を紹介しよう。

杉咲花の演技を堪能するためのお勧めの一本

『市子』(2023)

本作の監督を務めた戸田彬弘が主宰を務める劇団チーズtheater旗揚げ公演で上演された、「川辺市子のために」を原作にした作品。

2015年の夏に、恋人の長谷川(若葉竜也)と暮らす市子(杉咲花)は、プロポーズを受けた翌日に突然行方をくらます。長谷川は、市子の古い友人や知人をたどっていくが、その最中で市子の壮絶な人生を知っていく。

本作で杉咲は、第47回日本アカデミー賞で優秀主演女優賞、第78回毎日映画コンクールで女優主演賞を受賞。

杉咲花の演技力は、すでに数々の作品で証明されているが、改めて彼女の素晴らしい芝居を堪能するなら本作をおいて他にない。

一見地味な見た目でありながら、底知れない生命力を内に宿した主人公・市子。杉咲はそんなキャラクターを人間のもつあらゆる感情を浮かび上がらせるように陰影豊かに体現。自然体なのになぜか目が離せない。それが彼女の演技の大きな魅力である。

冒頭、食事中に恋人の長谷川にプロポーズされ、涙をポロポロと流しながら笑顔で「嬉しい」と答えるシーンは、この時点で物語の内容は定かではないにもかかわらず、大きな感動をもたらす。それはひとえに杉咲の芝居が芯に迫っているからだろう。

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