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あまりの上手さに観客が気づけない

菅田将暉『君たちはどう生きるか』(2023)

菅田将暉
菅田将暉Getty Images

【作品内容】

太平洋戦争中、母の死を経験した少年・眞人は、父親とともに田舎へ疎開する。新たな母親である夏子を認められず、父親にも複雑な感情を抱く彼のもとに人間の言葉を話す謎のアオサギが現れ、一緒に幻想的な「下の世界」へ足を踏み入れる。

【注目ポイント】

第96回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞した宮崎駿監督作品『君たちはどう生きるか』。非常に難解で複雑なストーリーをキャッチーな世界観で表現した本作で、物語のカギを握るアオサギを演じたのが、俳優・菅田将暉だ。

個人的には、エンドロールで菅田将暉の名前を見たとき「え、どの役が菅田将暉だった?」と考え込んでしまうほど作品に溶け込んでいた。

そもそもアオサギは難易度の高いキャラクターだ。鳥と人間の姿を行き来するが、中身は中年の男性である。過度にひょうきんでないし、かといって威厳もない。人によって解釈が分かれるキャラクターなのだが、見ていて自然に感じる。

それはひとえに現代を代表する「カメレオン俳優」菅田将暉の“憑依力”の賜物だろう。

映画俳優・菅田将暉の武器と言えば、伸びやかなアクション、力強いまなざしを思い浮かべる人は多いだろう。その点、声優という仕事は不利なのではないかと思われがちだが、本作では声を駆使して活き活きとしたキャラクターを作り上げることに成功。役者としての幅の広さ、底の深さを見せつけた。

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