現代最高のカメレオン俳優は…? 憑依的な演技に定評のある日本人俳優5選。震えるほど素晴らしい芝居で魅了する役者をセレクト
刑事、医者、犯罪者…。俳優という職業は作品に合わせて様々な役柄を演じる。視聴者は役者の見事な演技に触れて「まるで役が憑依したかのようだ」と賛辞をおくる。しかし、そうした感嘆をもたらしてくれる役者は決して多くない。今回は、現代日本を代表するカメレオン俳優を5人セレクト。その稀有な魅力を紹介する。(文・shuya)
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【著者プロフィール】
多数のジャンルを執筆するフリーライター。自身の俳優としての活動を生かし、映画やドラマ、俳優の素晴らしさを言葉で表現する。「言葉というかけがえのない芸術で人々の人生を変える」をモットーに、生きる力をあなたに届ける。
神がかった演技で観る者を魅了する
山田孝之
シリアスからコメディまで、幅広いジャンルの難役をこなす山田孝之。世間では「カメレオン俳優」との呼び声も高い俳優の1人だ。
俳優デビュー当初は、ドラマ『WATER BOYS』(2003、フジテレビ系)や、ドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004、TBS系)などで、好青年の役を演じていた。そうした話題作への出演を皮切りに、山田の演技は注目を集めるようになる。
そんな山田だが、2007年公開の映画『クローズZERO』の不良役をきっかけに、一癖も二癖もある役をあてがわれる機会が増え、殺人鬼からオタクに至るまで幅広い役をこなし、群雄割拠の俳優業界で不動の地位を築いてみせた。
あるインタビューでは「憑依型の俳優なんて存在しないと思います」と語っている山田だが、傍目からは役を憑依させているようにしか見えない神がかった演技も、本人の中では役づくりにかける血の滲むような努力の結晶ということなのだろう。
近年、山田の憑依的な演技で社会現象にもなったのが、Netflixオリジナルドラマ『全裸監督』(2019)である。本作は「アダルトビデオの帝王」と呼ばれていた村西とおる監督の型破りな半生を描いた作品だ。
令和に入り、ますます表現規制が厳しくなる中、コンプライアンスぎりぎりを攻めたドラマとして大きな話題を集めたが、力作になったのは、ひとえに村西とおるを演じた山田の卓越した演技の賜物だろう。脇目もふらず、理想の性を追い求める姿は、まさに本人そのもの。彼の演技は「役が憑依していた」と形容する他ない気迫に満ちている。
現在は、芸能学校のワークショップ講師や映画監督などへも活躍の幅を広げている山田。本人の活躍もさることながら、今後「第2の山田孝之」が生まれてくることも期待したい。