最も面白い三谷幸喜の脚本ドラマは? TV史に残る名作5選。凝りに凝った展開にしびれる…何度見ても楽しめる珠玉のセレクト
2024秋-2025年春は三谷幸喜に要注目だ。彼のホームであり、30年という長い充電期間にあった劇団・東京サンシャインボーイズの復活、そして5年ぶりの映画『スオミの話をしよう』の公開が迫っている。今回は、三谷幸喜脚本のドラマ作品の中から見直したい名作を5つセレクト。改めて魅力をかみしめたい。(文・田中稲)
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【著者プロフィール:田中稲】
ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。
三谷幸喜がテレビ界に〝引っ張られた〟記念作
『やっぱり猫が好き』
放送期間:1988年10月11日~1991年9月21日
放送時間:火曜24:30~25:00 (1990年10月よりゴールデンタイムへ昇格)
放送局:フジテレビ系
キャスト:もたいまさこ、室井滋、小林聡美
【作品内容】
登場するのは、長女・かや乃(もたいまさこ)、次女・れい子(室井滋)三女・きみえ(小林聡美)の恩田三姉妹と飼い猫のサチコだけ。長女・三女が暮らすマンションの一室を舞台に、別で暮らす次女が遊びに来て、何かと騒動が巻き起こる。
【注目ポイント】
シチュエーションコメディの傑作『やっぱり猫が好き』。舞台の脚本が中心だった三谷幸喜がテレビ界に〝引っ張られた〟記念すべきドラマである。放送期間は1988年~1991年のバブル期。『ニューヨーク恋物語』(フジテレビ系、1988)、『もっとあぶない刑事』(日本テレビ系、1988)といったトレンディでオシャレ、かつ金のかかったアクティブなドラマを楽しみ、深夜にはこの、もたい&室井&小林という芸達者の3女優によるユルさを満喫する――。ああ、何という贅沢な時代!
様々な脚本家が関わっており、三谷は1989年以降多くの回を担当している。当時は三谷幸喜のミの字も知らなかった私だが、今思えば「はまぐりペペちゃん」など、三谷フレイバー炸裂ではないか。彼も楽しんで書いていたのではないかと思われる。
限られた空間で、俳優の個性を活かし、独特なリズムで会話劇が展開される。どこまでがアドリブなんだかさっぱりわからない。リアルな吹き出し笑いもNGにせず使っている。スタッフの笑い声も入っていて、それに引っ張られて笑ってしまったものだ。
スペシャルドラマ企画『やっぱり猫が好き殺人事件』(1990)では、犯人が先にわかる「倒叙法」で、助監督を務めたのが河野圭太。この縁で河野と三谷は、やはり倒叙法を用いた傑作ミステリードラマ『古畑任三郎』(フジテレビ系、1994)でタッグを組むことになる、というのもアツいエピソードだ。
三谷の他にも、福田雄一、荻上直子、木皿泉といった錚々たる脚本家が、このドラマで脚本を書いている。いわば大作家の登竜門だった。再放送もいいが、いっそ、これらの脚本家による続編を見てみたい。