個性際立つ新キャストが物語を盛り上げる
仲間にも見放されたことで、かつてはやる気に満ち溢れていたスタッフたちの表情にも諦めの色が浮かび、店の中全体がピリピリとしたムードに覆われる。こんな彼らが見たかったわけではないのに。
かつてライバル・gakuの江藤不三男(手塚とおる)が言っていた「星を獲った店は、二度と星を落とせんという宿命を背負うことも忘れんように。もしも、星を落とすようなことがあったら、その店は確実に終わりまっせ」という台詞が頭をよぎった。
このスペシャルドラマで注目されたのは、なんといっても新キャストの存在だ。
『地面師たち』(Netflix)と『わたしの宝物』(フジテレビ系)で全く異なる演技を披露し、話題を集めた北村一輝と、今年No.1ドラマに挙げる人も多い『宙わたる教室』(NHK総合)で主演を務め、その実力が改めて証明された窪田正孝。今年の顔と言っても過言ではない2人が参加したことにより、物語は大きな盛り上がりを見せる。
湯浅は飄々としていて、一見何を考えているかよくわからない。だが、尾花と意見がぶつかり、「シェフは俺です。従ってもらいますよ」という一言で黙らせた時の表情の圧に驚いた。窪田はこういう静かな印象の中に強さを秘めた役がよく似合う。
そんな湯浅は尾花とともにグランメゾン東京に現れたかと思いきや、祥平に喧嘩をふっかけ、2人は伊勢海老の料理で対決することに。結果、湯浅の料理はみんなを唸らせるが、祥平の料理には誰もが黙り込む。「せっかくの素材、お前殺してるよ」という湯浅の酷評に悔しさを滲ませる祥平の表情にはこちらまで胸が痛くなった。