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ドキュメンタリーさながらの緊迫感

『119 エマージェンシーコール』第1話 ©フジテレビ
『119 エマージェンシーコール』第1話 ©フジテレビ

 混乱する通報者に対し、指令管制員たちは居場所や現場状況などの聴取を行わなければならない。場合によっては、通報者に心臓マッサージや応急処置の指示をすることも。

 それらを“声”ひとつで行う指令管制員たちのシーンは、まさに圧巻だ。ドキュメンタリーさながらの緊迫感にあふれていた。

 指令管制員は消防隊員のように直接命を救えるわけでもなければ、尽くしても滅多に感謝されることはない。いうなれば、日の当たりにくい職種である。しかし、そんな指令管制員を志して消防の世界に入ったのが、元銀行員の粕原雪(清野菜名)だった。

 雪の持つポジティブなエネルギーは、演じる清野と重なる部分がある。探求心に満ちた明るい性格の雪は、物語をパッと照らしてくれる存在。しかし、行動力のある雪にとって、現場へ行って自ら助けることができない指令管制員の仕事は、もどかしい思いを抱えることも多いように感じる。

“その後”を確認するため、火事や事故が起きた通報現場に出向くことも。雪は一度聞いた声や音を忘れない特技を持っており、自分の対応は間違っていなかったか、しばしば想像力を働かせる。「確実に店名が聞き出せていれば 消防車の到着を1分早くできた」「必死に非難している人に声を届けるには スピーカーフォンにしてもらえばよかった」想像によって数々の答えが見つかるが、雪の行動にあまりいい顔をしないのが、実際に現場で命を張る消防隊員たちだ。

雪が行ったことは、消防隊員たちからすれば信用していないと言わんばかりの行為でもある。命をかけて働く消防隊員に対し、指令管制員たちは通信指令センターという安全圏ともいえる場所にいる。軽い気持ちで踏み込まれたくないという消防隊員たちの気持ちは、もっともだと頷ける。

「わかっていない 通報を切って終われることが どれだけ恵まれたことか」雪を注意する教育係の兼下睦夫(瀬戸康史)は、元消防士だ。どれだけ頑張っても救えない命が確実にあり、消防隊員たちはその現実を直接目で見て、嫌というほど実感していることを兼下はよく知っている。

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