死者の秘密を暴くことの是非
結果として起こってしまったのは、新たなる凄惨な事件。絹子に呼びだされた少年と愛犬・ZIP(ジップ)がたどった末路はあまりにも悲しみに溢れていて、墓場まで持っていったはずの露口浩一の秘密を暴いてもなお、救うことのできなかった命だった。
語る口を持たない死者に秘密を語らせること。それは、真相の解明と天秤にかけたときに、果たして正義の礎として許される行為だと言い切れるのか。作中の音楽を担当するYaffleの緊迫した劇伴が流れるたび、その是非を何度も問いただされている気分になった。
初回からあまりにも重く苦しい事件が描かれるなかで、複雑な人間関係もうっすらと透けて見える。最後に薪と鈴木のバディと写真に映るのは、解剖医で鈴木の婚約者でもある三好雪子(門脇麦)。一見、仲の良い3人組に見えるが、それぞれが真に見据える視線は一向に交わらない。
闇に射す光があるとすれば、思い悩む薪を演じる板垣李光人と、薪に献身的に寄り添う鈴木を演じる中島裕人のタッグがすでに突出した相性を見せていることだろう。何よりふたりの身長差は原作でも慣れ親しんだ光景であり、この先、登場するであろう青木一行(中島裕翔/二役)にも引き継がれていくはずだ。
「本当にこんなに世界が美しいのなら。本当にこんなに世界が愛に溢れているのなら。いつか。いつか。僕の全ての罪が許される日も来るのだろうか」
切実な思いとは裏腹に、迫真の演技を魅せた夏子が扮した絹子の罵倒は、これから薪や第九のメンバーが浴び続けることになる言葉でもある。
さらに、ラストでは薪とも親しくしていた、MRI捜査技術を開発した脳医学の教授・貝沼清孝(國村隼)が、鏡の前で首を掻っ切る姿が映し出される。視聴者には衝撃が走ったことだろう。
これから怒涛の展開が繰り広げられることが予想されるが、原作のストーリーを踏まえてどのように連続ドラマとして仕立てていくのか。次回も見逃せないエピソードとなりそうだ。
(文・ばやし)
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