「大丈夫?」と聞かれたらどう反応する?

『晩餐ブルース』第1話 ©「晩餐ブルース」製作委員会
『晩餐ブルース』第1話 ©「晩餐ブルース」製作委員会

 そんな中、高校時代の旧友である蒔田(草川拓弥)と佐藤耕助(金子大地)と3年ぶりに再会。蒔田曰く、佐藤は有名レストランで料理人として働いているという。一方、コンビニで店長をしている蒔田は最近離婚したらしい。落ち込んでいる様子はなく、本人はケロッとしているように見える。

「大丈夫?」という佐藤の気遣いも無用と言わんばかりに、「え、何?これもしかして同情されてる感じ?」と苛立つ蒔田。筆者は女性なのだが、実はこういう感じ、あまりピンとこない。

「大丈夫?」と気遣われたら、心配かけたくなくて明るく振る舞うか、その優しさに甘えて本音をぶちまけるかのどちらかで、イラっとすることはないからだ。

 それで個人的に思い出したのが、かつて交際していた人のこと。ある日、彼に「男の人同士の飲み会で仕事の悩みとか話したりするの?」と聞いたことがある。すると、彼は「しないよ。話したってしょうがないじゃん。それより、お酒飲んでくだらない話で盛り上がる方がいい」というような趣旨のことを言っていた。

 その彼はのちに仕事でつまずき、心を壊す。私の支えだけではどうにもならなくて、「友達とか先輩に話を聞いてもらったらどう?」と提案してみたけど、彼はそうしなかった。彼には一緒にふざけ合える友人はいても、悩みを打ち明けられる友人はいなかったのだと思う。

 男性同士の場合は男の沽券にかかわるとか、真面目な話をするのはこっぱずかしいとか、色々と理由はあるのだろう。蒔田も本当は話を聞いて欲しくて、しばらく会っていなかった2人を飲みに誘ったのだと思うが、いざとなると、どうしていいのかわからないんじゃないだろうか。

 その点、女性は日常のように愚痴や悩みを言い合っているから、そこのハードルが低い。じゃあ、そういう機会が必要ないくらい男性は女性よりも精神力が強いかと言ったら、そうじゃないことは自殺率を見ても明らか。

 働き方改革、ジェンダー格差の解消など、社会が取り組むべきこともある。だけど、もっと日常的な心のケア。色んなストレスで荒らんだ心を癒す時間が男性にも必要なのだ。そこには、誰かに弱みも含め、自分という人間を開示すること。

 それを茶化さず、受け止めてもらうことも含まれる。そういう男性同士のケアを、本作は食事を通して描こうとしているのではないか。

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