ドラマ『晩餐ブルース』第1話考察＆感想レビュー。何気ないワンシーンで心を掴まれた…視聴継続を確信したその理由とは？

2人の晩活がもたらすもの

「かすみ草って知ってますか。あの花は2ヶ月飾っていても綺麗なままなんです。だから、枯れない花だと思われがちなんですが、そうじゃない。かすみ草は水に挿したまま、誰にも気付かれず、ドライフラワーになるんです」

　おそらく、佐藤が誰かに聞かされた言葉。彼は田窪がドライフラワーになりかけているかすみ草に見えたのかもしれない。ある日、田窪を家に誘った佐藤は料理を振る舞う。カレーにポテトサラダ。

　一人暮らしだと手間がかかって、量も多いので、作るのが躊躇われるメニューだ。誰もが、誰かに作ってもらった記憶のある料理。そこから伝わる優しさに触れ、田窪は涙を流す。今度は流しっぱなしじゃなく、ちゃんとティッシュで拭った。

「なんかあった？」という佐藤の問いかけに田窪が話すのは、仕事で「熱くなっちゃうのはしょうがない」という監督の特権に甘え、ただの八つ当たりなのにそれっぽくおこってしまったこと。誰も気にしていない。だけど、自分が気にしてしまうことも、誰かに話せば少しだけ楽になるものだ。

　晩餐活動、略して晩活に誘う佐藤。新メニューの開発というのは、きっと田窪に気を遣わせないための建前で、本当は心配して誘ったのだろう。そうまでして田窪を気にかけるのは、彼にもドライフラワーになりかけた時期があったからなのかもしれない。

　今はわからないが、2人の晩活、新鮮な生花であり続けるための時間が、誰にでもあってほしいと願う。

（文・苫とり子）

テレ東ほか　毎週水曜　深夜1:00～深夜1:30

各話放送終了後から、動画配信サービス「U-NEXT」「TELASA」「J:COM STREAM」「milplus」「Prime Video」にて順次見放題配信

【了】

1 2 3