「普通のドラマではできないことができちゃう」ドラマ『ペンション・恋は桃色』W主演、リリー・フランキー&斎藤工インタビュー
2020年1月、フジテレビで深夜 25 時台の放送ながら、リリー・フランキー、斎藤工、伊藤沙莉、細野晴臣といった豪華キャストが出演し、伊藤沙莉がギャラクシー賞を受賞したことでも話題を呼んだ連続ドラマの最新作『ペンション・恋は桃色 season3』が動画配信サービスFODにて配信中だ。今回はリリーさんと斎藤さんのインタビューをお届け。制作の裏話など、たっぷりとお話しを伺った。(取材・文:山田剛志)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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リリー・フランキー「小劇場の舞台を観ているような感覚がある」
堅い信頼で結ばれたチームで臨んだseason 3
―――さつまいもが焼けるまで、あるいは、糠漬けが完成するまでのゆったりとした時の流れがドラマ全体にじんわり浸透していて、観ていて心が洗われました。
リリー・フランキー(以下、リリー)「ありがとうございます。監督が意図してないような演出まで汲み取ってもらえるのは嬉しいですね」
―――そんな(笑)! 絶対に意図されていると思います。
斎藤工(以下、斎藤)「おっしゃるように、肉まんが蒸し上がるまでじっくり待つ、現場にはそういう時間が流れていましたね」
―――完成した作品の雰囲気からもそれはよく伝わります。今回は第3弾ということで、キャスト、スタッフ共に、十分に打ち解けた中での撮影だったのではないかと想像します。
リリー「そうですね。スタッフもほぼ同じメンバーでした。気心知れたメンバーじゃないとあのスタイルで5話も撮れないよね」
斎藤「そうですね。いつもながら今回もスケジュールはかつかつでしたから」
リリー「なんならカメリハもしないで本番に行くようなこともありますからね」
斎藤「そうですね」
リリー「画面の中で演者の立ち位置が重なる瞬間があったり、シーンによっては『まんべんなく照明が当たっていなくてもいい』という意識でやっているもんだから、ドラマのルック的にも新鮮ですよね。配信ドラマというよりかは小劇場の舞台を観ているような感覚があります」
―――逆に言うとseason1の時は、スタッフとキャストが作品の世界観をすり合わせる作業を入念になさったということでしょうか。
リリー「いや、それがseason1の頃から、あんま変わってないんです」
斎藤「変わってないですね」
リリー「season1の時点で『これが最善だろう』という形が自然にできたんですよね。現場でフレキシブルに考えていく、というやり方は最初から変わっていないです」
―――本作は、脚本はありながらも、演者のインスピレーションを大事にするような形で撮られていて、他のドラマでは観られないリアルで瑞々しい瞬間にあふれています。それは『ペンション・恋は桃色』の得がたい魅力の1つだと思います。
リリー「それは毎回ありますよね。とはいえ、おいそれとできることでもなくて。今回だと特に稲垣吾郎さん。あの役を成立させるのは、むちゃくちゃ難しいですよ。それは台本の段階でプロデューサーも懸念していました。でも、蓋を開けたらやっぱり吾郎さんは凄かった。役にリアリティを持たせつつ、コメディセンスが光る瞬間もあって。やっぱり『SMAP×SMAP』で培ったものが根っこにあるんだなあ、凄いなあ、と思いました」
斎藤「舞台(『No.9 -不滅の旋律-』)でベートーヴェンを演じている方ですからね」
リリー「今回、『運命』がテーマだしね(笑)。思い返すと、ベートーヴェンが乗り移る瞬間があったかもしれない。ハル(伊藤沙莉)との関係を巡ってみんなから責められ、開き直って熱弁をふるうシーンとかすごく迫力がある」