鴻田「自分より下の存在ならいいけど、脅威と感じたら追い出すの?」

『東京サラダボウル』第5話 ©NHK
『東京サラダボウル』第5話 ©NHK

 ティエンは早川に、「ティエンと進さん(=早川)は同じですね」と声を掛ける。早川はこれを、歳も近く下っ端で、家族とも離れて友だちもいない1人ぼっちだからだと解釈していた。そして、「自分よりも可哀想なやつに見えたから」友だちになれると思ったという。しかし、ティエンにはベトナムで帰りを待つ家族がいて、明るく勉強熱心な勤務態度から施設の人たちにも気に入られていた。

 楽しそうにテレビ電話をするティエンの姿を見た早川は、可哀想と思われていたのは自分のほうなのではないか、と勘繰ってしまう。そして生まれた黒い感情から、盗んだタブレットをティエンのロッカーに隠したのだ。

「帰る場所があるなら帰ればいい」という早川の表情には、怒りが垣間見える。可哀想と思っていた相手に、可哀想と思われていた。彼にしてみたら、きっと屈辱的だっただろう。「同じですね」と言われたことも相まって。

「自分より下の存在ならいいけど、脅威と感じたら追い出すの?」という鴻田の言葉は痛烈だった。これは外国人居住者だけでなく、人と人の関係全般において当てはまることだろう。

 上とか下とか、この人よりは“マシ”とか。向き合った相手との位置関係を、無自覚に考えてしまう。自分を顧みて、思い当たることがないと言い切る自信がなかった。

1 2 3 4
error: Content is protected !!