日本は既に慢性的な労働者不足

『東京サラダボウル』第5話 ©NHK
『東京サラダボウル』第5話 ©NHK

 早川が犯行を認めたあとの取り調べで、別島は「マイノリティがマイノリティじゃなくなったら、もっと権利をよこせってやかましくなる。日本で働かせてるもらってる立場も忘れて」と吐き捨てるように言っていた。残念ながらこんなふうに考える人も少なくはないのだろう。

 これを聞いていた今井は、「外国人を働かせてやってるんじゃない、働いてもらってる」と、別島に語り掛ける。少子高齢化の影響で、慢性的に人手不足が続いている日本において、もはや外国人労働者は必要不可欠だ。

「外国人を愛せとは言わない、でも、敵視して排除しても、あなたの居場所は守れない」。変化の過程で生じる軋轢は避けられないが、受け入れる姿勢は失わずにいたい、と改めて思った。

 ティエンは「進さんが助けてくれたのは、僕が可哀想な日本人に見えたから」だと気付いていた。でも、それは友情ではない。自分もいつか必要とされたい。

 ティエンがいかに2人の関係を前向きに捉えていたかが伝わってきて胸が苦しくなった。さらに、ティエンと進が「同じ」といったのも、ティエンは漢字で「進」と書くからだった。

 同じ名前を持つ2人の友情は、今回の一件で残念ながら以前とは形が変わってしまうだろう。立件こそされなくても、早川がやったことは暗い影を落とす。それでも、いまこの瞬間を同じ国で生きている者同士として、いつかわかり合えたらいい。上も下もなく、ベトナム料理を笑顔でつつきあえる日を願って。

(文・あまのさき)

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