有木野(松田龍平)が他人と一線を引いてきた理由

『東京サラダボウル』 第7話 ©NHK
『東京サラダボウル』 第7話 ©NHK

 鴻田は織田のことを調べるなかで、代々木の通り魔事件で有木野、八柳(阿部進之介)、そして織田が長官賞を受賞していたこと、そして鴻田が警察官を志すきっかけになった一言をかけてくれたその人こそ、織田であったことに気が付く。偶然の一致にしたって、ちょっとゾッとするだろう。鴻田が小さな悲鳴のような声を上げてしまったのも頷ける。

 翌日、鴻田は八柳を呼び出し、織田の死の真相について聞く。担当弁護士から誤訳の可能性を疑われた上麻布署は、当初、音声データはないと答えていたが、実際にはデータが存在し、週刊誌に垂れ込まれた。

 その取り調べを担当していたのが阿川と織田で、記事が出た1週間後に織田は自殺。音声データは、阿川の内偵を行っていた有木野が漏洩したのではないかと疑われたというのだ。

 鴻田は、自分の目で見たものしか信じない刑事だ。そんな彼女にとって、有木野は情報漏洩をするような人間には到底思えなかったのだろう。織田の妹の家を訪ね、遺品などを見せてもらうことに。そこで鴻田は、笑顔で肩を寄せ合う有木野と織田の写真を目にしたようだった。これはおそらく、有木野はそんな人じゃない、という鴻田の考えを強化したはずだ。

 そんな折、鴻田のもとに、何者かによってモンチが殺されたとの一報が入る。ボランティアの件を話そうとした動きが知られたことが原因だろう。鴻田はその死に責任を感じ、有木野の過去にぐっと踏み込もうとする。

 織田の死、誤訳事件、情報漏洩の真相について知りたいと必死の表情を浮かべる鴻田に対し、有木野は頑なだ。織田との思い出とともに封印した記憶を他人に探られないことこそ、有木野が他人と一線を引いてきた理由なのだろう。

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