なぜ、私たちは大人になるにつれて
「夢」という言葉が嫌いになるのだろうか
20年前、誠司の教え子たちはタイムカプセルを持って楽しそうにしていた。もちろん、ゆかりの顔にも笑顔があふれていた。
それにもかかわらず、ゆかりは自分のタイムカプセルを手にしてすぐに投げつけた。タイムカプセルを見て、「留学して学校に行ってみたい 通訳とかいいな」と誠司に笑顔で語っていた20年前の自分を思い出したから。
この頃の夢とはほど遠い自分の姿をタイプカプセルを通して直視し、心が乱れたのだ。現在、ゆかりは毎月17万円の手取り額でやりくりしており、ただただ必死に生きているという。
仕事は自己実現の1つともいわれているが、一部の恵まれた人たちの話だとも思う。少なくない人たちが“自分が何をやりたいか” “仕事を通して自分はどうなりたいか”ではなく、“今の自分に何ができるか”という基準で仕事を選んでいる。
また、どのような仕事であれ、人は働く喜びを感じる瞬間があるといわれている。大人を長くやっていると、こうした言葉さえも綺麗ごととしか思えない時期が少なからずあるはずだ。仕事において喜びを感じなくても働かなければならないことを分かっているから…。
期待を何度も裏切られ、自分の未来に希望を抱けなくなると心はささくれる。大きな夢を語る人に対して“あまちゃん” “大人になりきれていない”と評価してしまうこともあるだろう。
多くの人たちが夢や希望を抱きにくい時代において、誠司は教え子たちだけではなく、かつて子どもであった私たち視聴者にも前を向くきっかけを与えてくれるはずだ。
(文・西田梨紗)
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