商売敵・鱗形屋(片岡愛之助)の経営難がさらに悪化
吉原を女郎たちが楽しい思い出をたくさん持って、出ていけるところにする――。蔦重の言葉に動かされたのはもちろん、愛する人と離れてまで瀬川が叶えたかった夢を駿河屋は実現させてあげたいと思ったのかもしれない。そう考えたら、蔦重がしてきたことも、悲しい別れも無駄じゃなかった。腐らずに生きていたら、そうやって報われる瞬間がふと訪れるから前に進んでいける。
だけど、そうじゃない人はどうしたらいいのだろう。頑張っても頑張っても報われるどころか、どんどん状況が悪化していく人は。『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15話は、蔦重の恩師とも呼べる人たちに暗い影が忍び寄る回だった。
これまで多くの人に助けられてきた蔦重だが、この人がいなければ、確実に今の彼はいないと言える3人がいる。一人は鱗形屋(片岡愛之助)。今や商売敵として蔦重を目の敵にしているが、そもそも彼に本作りの楽しさを教えたのは鱗形屋だ。
鱗形屋から『吉原細見』の改役を任されなければ、蔦重は自分で本を作ろうなんて思わなかったかもしれない。お互いの才能もどこかで認めていて、良い師弟関係になれた可能性もあった。
きっと鱗形屋も本来は面倒見のいい性格だが、商いの厳しさが彼を歪めてしまったのだろう。火事のせいで経営難に陥った鱗形屋にとっては、ライバルが一人でも増えることを看過できない。そんな鱗形屋は起死回生の糸口を掴めないまま、来年にも青本が作れなくなるだろうと言われていた。