まさかの裏切り…? 道枝駿佑”本橋”が公式スピンオフで魅せる本編とのギャップとは?『キャスター』第8話考察&感想【ネタバレ】
ドラマ『キャスター』(TBS系)が現在放送中。本作は、テレビ局の報道番組を舞台に闇に葬られた真実を追求し、悪を裁いていく社会派エンターテインメント。3年ぶり6回目の日曜劇場主演となる阿部寛が、型破りなキャスターを演じる。今回は、第8話のレビューをお届け。(文・ばやし)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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大きな闇が潜む芦根村
進藤(阿部寛)の元妻・恭子(相築あきこ)が放った「進藤壮一は真実を追求してるんじゃない。過去に囚われているだけ」と言うセリフ。その言葉を強く思い出させるかのように、第8話は進藤(阿部寛)の記憶に刻まれた自衛隊C-1輸送機の墜落事故の真相に大きく迫るエピソードとなった。
芦根村で突如、起こった大規模な山火事。芦根村は原子力関連の施設が集中している場所であり、「ニュースゲート」のプロデューサーを務める山井(音尾琢真)の故郷でもあった。
しかし、災害現場で進藤たちが取材を行う最中、認知症を患って施設に入居中だった山井の父親・和雄(山本學)が、火災現場付近で行方不明になったことが知らされる。
芦根村に大きな闇が潜んでいることは、原子力燃料再処理センターの所長である江上(井上肇)が、消防への連絡を遅らせたことからも明らかだ。進藤がずっと追っていた輸送機の墜落した現場もまた、芦根村。その地に隠された“何か”が車で運ばれるカットも忍ばせており、次回以降も、43年前の真相のカギを握る重要な場所となるはずだ。
進藤(阿部寛)の圧倒的なセリフ量と説得力
災害現場での「報道」では何を優先するべきか。一刻を争う状況のなかで、現地報道における緊迫感のある空気が映像には映し出されていた。
もちろん現場での報道において、事実と状況を正しく伝えることは大前提である。しかし、災害現場での中継や取材において、被災者の気持ちを蔑ろにすることはあってはならない。
実際、進藤が「ニュースゲート」の冒頭で、デマによる憶測や風評被害に加担しないよう冷静な対応を求めていたり、ADの本橋(道枝駿佑)が避難所で取材を受けてくれた人を慮ったりと、誰もが被災者への気遣いを見せていた。
山井も父親の安否を気にしつつ、現場での仕事を全うする。単なる現場取材ではないことが強調された数々のシーンによって、より災害現場での取材におけるリアリティは担保されていたのではないだろうか。
それにしても、阿部寛が放つセリフの並外れた説得力たるや。阿部寛はこれまで出演してきた作品の役柄に比べると、圧倒的にセリフ量が多い。キャスターとして淡々と事実を伝える場面も多いが、ここぞという場面で圧が込められた芝居は、腹に鉛を打ち込まれるような重みがあった。
名脇役たちの熟練した芝居力がドラマを盛り上げる
本ドラマは、報道の現場から闇に葬られた真実を追求していく社会派エンターテイメントでありながら、番組制作に関わる人々の動きや葛藤を綿密に描いた“群像劇”でもある。
これまでも報道局長の海馬(岡部たかし)やディレクターの梶原(玉置玲央)にスポットがあたり、岡部たかしや玉置玲央の熟練した芝居を堪能することができた。今回のエピソードで重要人物となった山井Pを演じるのもまた、音尾琢真なのだから抜かりがない。
番組制作を支えるスタッフたちは、あくまで黒子として自らの仕事を全うしている。それはキャスト陣も同様で、岡部たかしや音尾琢真、編集長の市之瀬を演じる宮澤エマなど、錚々たる面々が脇を固めているからこそ、フィーチャーされる人物が毎話変わっても、視聴者の目を惹きつける画を生み出すことができるのだろう。
ほかにも、本編のサイドストーリー『恋するキャスター』で活躍する戸山紗矢(佐々木舞香)が現場に参戦するサプライズがあるなか、番組の編成担当である滝本(加藤晴彦)には怪しい動きが見られる。
思い返せば、山火事の一報を誰よりも早く伝えたのも滝本だった。羽生一族と景山重工の会長である景山英嗣(石橋蓮司)の会合にも顔を出しており、国定会長(高橋英樹)の右腕としていわくつきの仕事を秘密裏に行っている可能性も十二分にあるだろう。
第1話の裏取引がここにきて明るみに
景山重工と羽生一族の癒着や、43年前の自衛隊C-1輸送機墜落事故の真相など、気がかりなトピックスが山のように積み上がるなか、最後の最後で予想だにしない展開が待ち受けていた。
これまでずっと放置されてきた、第1話の進藤と羽生官房長官(北大路欣也)の裏取引。ここにきて、その出来事が週刊誌にスクープされたことはもちろん、驚くべきはその真相を告発したのが本橋だったことだ。
避難所では被災者を気遣う姿を見せ、自身を責める山井に対して「バチがあたったなんてないです。絶対にないです」と力強く答えた彼が最後に見せた意味深な表情。これまで進藤の右腕として動いていた本橋だからこそ、覚悟を決めたような冷たい表情に大きなギャップが生まれる。振り幅のある芝居をこなした道枝駿佑の演技力が光ったラストシーンだった。
道枝演じる本橋は『恋するキャスター』でも恋愛ドラマの主人公のような面持ちで、戸山と視聴者を翻弄しており、異なる一面を視聴者に見せ続けている。一方で、華も進藤が芦根村に執着する理由を嗅ぎつけており、今後、彼ら3人の関係性には大きな変化が生まれるはず。
予告の不穏さも相まって、次回は見逃せない一話となりそうだ。
【著者プロフィール:ばやし】
ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。
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